2018年02月05日 14:30 〜 15:30 10階ホール
原晋 青山学院大学陸上競技部監督

会見メモ

青山学院大学の原晋監督(50)は、正月恒例の箱根駅伝で4連覇を果たした。会見では、成功談よりも、関東の大学に限定されている箱根駅伝の全国化や実業団間の選手移動の自由化など日本陸上界の改革プランについて熱を込めて訴えた。

 

青山学院大学陸上競技部公式HP 

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

旧態依然の組織に発展なし

竹田 忠 (企画委員 NHK解説委員)

 スポーツの問題で、これほど明確に、そして具体性をもって、中から改革を求める会見も珍しいのではないか。しかも、覇者が行った会見で。

 大晦日のテレビといえば紅白歌合戦だが、では正月のテレビはというと、今や箱根駅伝の中継になるだろう。往路と復路で2日間、それぞれ7時間前後の生中継が行われ、関東では30%近い驚異的な視聴率をたたき出す。その箱根駅伝に新風を巻き起こし、4連覇を成し遂げた青山学院大学の原晋監督。

 会見で最も力が入ったのは、箱根駅伝の全国化問題。「箱根駅伝は、今や長距離界の宝」。だが、参加できるのは主催団体の関東学生陸上競技連盟に加盟している大学のみ。つまり地方の大学は参加できない。人口減少で学生が減る中、陸上競技の裾野を広げるためには、全国化して地方に門戸を広げるべきで、旧態依然の組織のままでは発展はないと危機感を表明。

 実はその原監督、青学に来るまで「指導実績も華々しい競技実績もなし」。営業マンとしてのビジネス経験こそが選手の指導・育成の原点という、自称“異端児”。選手育成の秘訣は、「社会の中で通用する人材をどうやって育てるか。スポーツを通して学べるものは何か」という視点。その背景には監督自身が、実業団の選手を引退したとき、陸上をやってきて何か社会に生かせるものがあるかというと、何も見つからなかったという反省がある。

 改革の訴えは、実業団の移籍問題にも及ぶ。実業団ではチームの部長や監督のハンコがないと、選手の移籍が認められない場合が多い。もっといい監督のもとで指導を受けたいと選手が思っても、ハンコを押してもらえず、囲われている実情があると指摘、指導者が勉強し合って、選手をどうやって伸ばすかを競い合わないと将来はないと訴えた。スポーツでも大学でもビジネスでも、組織の問題に悩める人に必見の1時間。


ゲスト / Guest

  • 原晋 / Susumu Hara

    青山学院大学陸上競技部長距離監督 / Ekiden team's head coach, Aoyama Gakuin University

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