2017年08月04日 15:30 〜 16:30 10階ホール
中満泉国連軍縮担当上級代表(事務次長)会見

会見メモ

1989年に国連入り、今年5月に日本人女性として初めて国連の軍縮部門トップに就任。軍縮の速度が低下している現状に危機感を表明。「軍縮実現には人道だけでなく安全保障の観点も必要。軍縮プロセスに、企業、研究者など民間部門の参加が21世紀の課題」

 

司会 山田惠資 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

21世紀に対応した「軍縮」へ

今の国際情勢で軍縮を語ることはユートピアなのか。国連の軍縮トップはピンチはチャンスだと、軍縮の捉え直しを通じて安全保障問題の解決をはかり、国際協力の再構築を進めていく重要性を訴えた。

 

就任から3カ月。核兵器禁止条約の交渉をまとめあげ、7月の採択に導いた。交渉の傍ら、参加を見送った核兵器保有国とその同盟国に働きかけていたという。「『核禁条約』の現実にどう向き合うのか」と。

 

一方で推進国には、NPT(核不拡散条約)と今回の条約のどちらかを選ぶことがないようにと「それこそ毎日申し上げてきた」という。

 

条約の賛否をめぐり生じた溝を埋めていくため、「中間にいる日本」には強い期待を表明。亀裂ができた一方で、軍縮特別総会を開催しようとのアイデアが双方から出ていることも明かした。

 

会見で際立っていたのは、構想力だった。例えば、人道上の観点が強かった軍縮を、戦略的に安全保障の議論に乗せていくアプローチ。北朝鮮の核開発とミサイル実験をめぐる問題については、政治合意をはかるために軍縮を盛り込む必要性を説いた。

 

国際社会の平和と安全のためのアジェンダのコアな要素として軍縮を捉え直す。英語でリポジションと呼んでいるとのこと。この捉え直しを通じて、21世紀型の安全保障問題に対応していくのだという。念頭にあるのはサイバー攻撃やAI、3Dプリンター、合成生物学などの軍事利用だ。

 

中満さんは、国連本部で働く日本人で最高位の役職にある。よどみなく理路整然と話しながらも、国連と自身の仕事へのパッションが伝わってきた。この先、彼女の存在を通じて、国連で働くことを目指す人が増え(特に女性)、軍縮問題にかかわる人たちの裾野が広がっていくに違いない。

 

グテーレス事務総長は、「組織や役職に女性が5割いなければジェンダー平等とはいえない」と言っているそうで、日本にはグテーレスさんが何人も必要だと思った。リポジションの構想の有用性と可能性を何重にも感じた会見だった。


朝日新聞社報道局記者 北郷 美由紀

ゲスト / Guest

  • 中満泉 / Izumi Nakamitsu

    国連軍縮担当上級代表(事務次長) / Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs

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