会見リポート
2009年04月17日
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本原仁志・日本人材派遣協会理事長
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会見リポート
神崎 明子 (日刊工業新聞東京支社編集部)
派遣社員やパート、アルバイトといった非正規社員が全雇用者の3割以上にまで膨れあがった現実。「雇用の柔軟性を確保し、企業成長を支える機能を果たしてきた」と意義を強調する。一方で、市場の急拡大に“大人の業界”としての成長が追いついてこなかったのは事実だ。例えば08年の東京・秋葉原での無差別殺傷事件。「(派遣という不安定な働き方に対する)心理的ケアは派遣会社の役割のひとつだが、十分に対応できていなかったことが、こうした問題を招いた一面もある」と珍しく言及した。協会の非加盟企業には法令順守が徹底されていない企業も多く、業界健全化に向けた取り組みに限界があることへ忸怩たる思いもにじませる。
過去最大規模の政府の経済対策では、雇用対策が柱のひとつに盛り込まれた。非正規社員の安全網拡充として、職業訓練中の失業者への生活費支給は確かに必要だ。ただ、長期的視点で求められるのは、個人が自らのスキルを鍛え、雇用される能力(エンプロイアビリティー)を高めるための仕組み作りである。
個人の能力に応じた、きめ細かい支援は国頼みではおのずと限界がある。収益環境の激変で、雇用確保さえ約束できなくなった企業に人材投資の余力はない。雇用不安が強まるなか、「各人のスキルに合わせた対応策を考えていくことが重要」との同氏の指摘は現実的。
そして、その一翼を担えるのは働き方の多様化を推進してきた人材業界。景気悪化で雇用政策の真価が問われるいま、業界は自らが担う役割の重さを認識するべきだろう。
ゲスト / Guest
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本原仁志 / Hitoshi MOTOHARA
日本人材派遣協会理事長 / Chief Director, Japan Staffing Services Association
研究テーマ:雇用問題