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会員が出版した書籍を、著者自身によるワンポイント紹介とともに掲載しています。
■にほんでいきる 外国からきた子どもたち(毎日新聞取材班編)
磯崎 由美(毎日新聞社編集編成局次長)
▼「学ぶ権利」見えない格差を追う
児童が登校しなくなり、親とも連絡がつかない。虐待か、失踪か。行政は現状把握に走る。だがそれが外国籍の子の場合、「就学義務がない」として誰も動かない。
多文化共生をうたうこの国の「学ぶ権利」に、見えない格差が存在する。その実態に迫ったキャンペーン報道を書籍化した。登校の夢かなわず命を奪われた少女。犯罪に手を染めた少年。通学しても日本語が分からないだけで「発達障害」とされる子たち…。たった2人の取材班は厳しい現実のルポとともに全国調査や情報公開を駆使した報道を続け、国は対策に動き出す。
「この本を開けば、聞こえてくるはず。たくさんの『ここにいるよ』という声が」。書籍化にあたりフォトジャーナリストの安田菜津紀さんが寄せた言葉だ。声なき声を伝え、社会を変えていく。そんなジャーナリズムの原点は、ネット時代でも変わらない。2020年度新聞協会賞受賞。
明石書店 / 1760円 / ISBN 4750351199
■愛国とナチの間 メルケルのドイツはなぜ躓いたのか
高野 弦(朝日新聞社前ベルリン支局長)
▼「健全なナショナリズム」は可能か
G7のリーダーで最長の任期となったドイツのメルケル首相が2021年秋に政界を去る。彼女を追い詰めたのは、何だったのか。反メルケルの政治勢力を取材すると、リベラル民主主義の名のもとで深まった人間の疎外の問題、アイデンティティーへの危機感が見えてきた。かつてこの国を支配した狂気の歴史は、繰り返されるのだろうか。ポストメルケル時代の展望、日本がこれから直面するであろう移民社会の厳しい現実も描いています。
朝日新聞出版 / 1650円 / ISBN 4022517239
■証言 天安門事件を目撃した日本人たち 六四回顧録編集委員会編
高橋 茂男(日本テレビ出身)
▼日本の中国報道の転換点にも
中国共産党が、事実上無かったことにしている1989年6月4日の「天安門事件」。あれから30年の時間が流れ、関係者は一線を退き、勤務先等に遠慮することなく事件を語れるようになった。機が熟した今、当時北京にいた日本人のジャーナリスト、企業駐在員、大使館員らにあの時何を目撃し、いかに行動したのか証言してもらった。本書に収録された44人の証言は、中国がひた隠しにする歴史の真実のいくばくかをあぶり出し、次世代に伝えるものである。
ミネルヴァ書房 / 3520円 / ISBN 4623089924
■年表 移住150年史 邦人・日系人・メディアの足跡
新実 慎八(毎日新聞出身)
▼日本人移民史研究に必須の一冊
幕末から令和まで150年にわたる、北米、南米を中心とした日本人移住の歴史を、年月日順に網羅した年表。移住先各国の実情、日系社会の出来事、邦字新聞の歩みが同時代史として一覧できる。重要語句には詳細な解説、索引をつけ、年表とは別に14カ国・地域の移住略史を加えた。筆者が理事長を務める海外日系新聞放送協会渾身の労作。日系人関係の仕事に半世紀にわたって取り組んできた同協会の岡野護専務理事(当クラブ特別賛助会員)がまとめた。
風響社 / 5500円 / ISBN 4894892804
■ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス
春名 幹男(共同通信出身)
▼「Tanaka」と記した文書が特捜に
ロッキード事件で田中角栄はなぜ逮捕されたのか。その理由と方法を探るため、ロッキード社資料が米証券取引委員会(SEC)を経て司法省から東京地検に提供された経緯を日米で徹底取材し、これまで分からなかった真実にたどり着いた。
実は田中は自主外交が米国に嫌われ、逮捕される結果になったのです。訴追されなかった「巨悪」の正体にも迫り、世間を惑わせた「誤配説」や「虎の尾を踏んだ説」など陰謀説の真相も解明、多くの疑問に答えています。
KADOKAWA / 2640円 / ISBN 4041054737
■現場 記者たちの九州戦後秘史(西日本新聞社編)
島村 史孝(西日本新聞出身)
■私たちは何を見、何を考えたか
九州で戦後起きた事件・事故・自然災害・公害・人権・地域づくりなどについて、現場で取材した記者たちが再度ペンを執り、当時の時代状況や秘話の類いも交えて再検証し、戦後史に位置づけた。執筆者は100歳を最高齢にOB43人、現役4人。全52話。
素材は、戦後の占領下の取材活動、三池争議と炭鉱事故、三派全学連のエンプラ闘争、九州大への米軍戦闘機墜落、よど号ハイジャック、同和問題のタブーに挑戦、「拝金社会」の幕開けを告げた別府3億円保険金殺人、吉野ケ里で巨大墳丘墓発掘、日本初の「セクハラ訴訟」、中国残留孤児の人生、水俣病医学者の警告、ハンセン病問題が今に問うもの、「ヤミ金融」の実態を暴く、など。
時代の転換点にあって、遠ざかる記憶から教訓を引き出し、未来への伝言としている。
西日本新聞社 / 1540円 / ISBN 4816709843
■歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか
大治 朋子(毎日新聞社専門記者)
▼暴力メカニズムを「見える化」
著者はアフガニスタンやエルサレムで紛争地取材を続け、その後2年間休職してイスラエルの大学院やシンクタンクを拠点に「人はなぜ過激化するのか」をテーマに研究。コロナ禍に現れた「自粛警察」からテロリズムにいたるまで、通底する暴力の暴走メカニズムを解き明かし本書で「見える化」した。「自分は絶対に正しい」と思い込むと、人間の凶暴性が牙をむく。詳細な文献情報を併せた「アカデミ・ジャーナリズム」実践の調査報道。
毎日新聞出版 / 1760円 / ISBN 4620326380
■「高齢ニッポン」をどう捉えるか
浜田 陽太郎(朝日新聞社編集委員)
▼社会保障めぐるメディアの在り方
「ああ、そういうの、男の記者でもやるんだ」。主婦の年金問題を追っていた「くらし報道」の現場から、「権力の館」である首相官邸の記者クラブに放り込まれたとき、政府首脳から言われた言葉です。17年前、小泉首相時代のエピソードを盛り込んだ終章のサブタイトルは「社会保障のメディアリテラシー」。勁草書房のサイト内「あとがきたちよみ」コーナーで気前よく(笑)、無料公開しています。
勁草書房 / 2420円 / ISBN 4326654260
■大江健三郎全小説全解説
尾崎 真理子(読売新聞出身)
▼もう難解とは言わせません
「若い頃はよく読んだけど」。ならば今こそ再読をお勧めしたい。氏が60年間に書いた小説は戦後日本を生きた人間たちの記録であり、ノーベル賞はここまで時代を背負い、情趣豊かな作家にしか与えられぬと実感されることでしょう。とはいえ『芽むしり仔撃ち』以来の長編30作、中短編66作を読み通すのは至難の業。粗筋と主題を大づかみし、主要批評を網羅した本書で、まず全貌を知るのも一計では。「晩年の仕事」も味わい深いです。
講談社 / 3850円 / ISBN 4065195063
■マンガ万歳―画業50年への軌跡
小松 嘉和(秋田魁新報社東京支社編集部長)
▼漫画家・矢口高雄さんの半生
「釣りキチ三平」で知られる人気漫画家・矢口高雄さんは今年で画業50年。その節目に合わせた聞き書きで、半生をたどった。雪深い山里に生まれ、30歳で銀行員から漫画家に転身。「幻の怪蛇バチヘビ」で大ヒットし、ツチノコブームの火付け役に。その直後に発表した「釣りキチ三平」は老若男女が心酔する名作となった。まるで漫画のような波瀾万丈のドラマが満載だ。
未完のままお蔵入りとなった「雨沼の鱗剝ぎ」の原画や、矢口さんお気に入りの短編作品も収録。心の奥底にある昭和の原風景を呼び覚ます。
秋田魁新報社 / 1430円 / ISBN 4870204142