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会員が出版した書籍を、著者自身によるワンポイント紹介とともに掲載しています。


■証言 天安門事件を目撃した日本人たち 六四回顧録編集委員会編

高橋 茂男(日本テレビ出身)

▼日本の中国報道の転換点にも 

 中国共産党が、事実上無かったことにしている1989年6月4日の「天安門事件」。あれから30年の時間が流れ、関係者は一線を退き、勤務先等に遠慮することなく事件を語れるようになった。機が熟した今、当時北京にいた日本人のジャーナリスト、企業駐在員、大使館員らにあの時何を目撃し、いかに行動したのか証言してもらった。本書に収録された44人の証言は、中国がひた隠しにする歴史の真実のいくばくかをあぶり出し、次世代に伝えるものである。


ミネルヴァ書房 / 3520円 / ISBN 4623089924

■年表 移住150年史 邦人・日系人・メディアの足跡

新実 慎八(毎日新聞出身)

▼日本人移民史研究に必須の一冊 

 幕末から令和まで150年にわたる、北米、南米を中心とした日本人移住の歴史を、年月日順に網羅した年表。移住先各国の実情、日系社会の出来事、邦字新聞の歩みが同時代史として一覧できる。重要語句には詳細な解説、索引をつけ、年表とは別に14カ国・地域の移住略史を加えた。筆者が理事長を務める海外日系新聞放送協会渾身の労作。日系人関係の仕事に半世紀にわたって取り組んできた同協会の岡野護専務理事(当クラブ特別賛助会員)がまとめた。


風響社 / 5500円 / ISBN 4894892804

■ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス

春名 幹男(共同通信出身)

▼「Tanaka」と記した文書が特捜に 

 ロッキード事件で田中角栄はなぜ逮捕されたのか。その理由と方法を探るため、ロッキード社資料が米証券取引委員会(SEC)を経て司法省から東京地検に提供された経緯を日米で徹底取材し、これまで分からなかった真実にたどり着いた。

 実は田中は自主外交が米国に嫌われ、逮捕される結果になったのです。訴追されなかった「巨悪」の正体にも迫り、世間を惑わせた「誤配説」や「虎の尾を踏んだ説」など陰謀説の真相も解明、多くの疑問に答えています。


KADOKAWA / 2640円 / ISBN 4041054737

■大江健三郎全小説全解説

尾崎 真理子(読売新聞出身)

▼もう難解とは言わせません 

 「若い頃はよく読んだけど」。ならば今こそ再読をお勧めしたい。氏が60年間に書いた小説は戦後日本を生きた人間たちの記録であり、ノーベル賞はここまで時代を背負い、情趣豊かな作家にしか与えられぬと実感されることでしょう。とはいえ『芽むしり仔撃ち』以来の長編30作、中短編66作を読み通すのは至難の業。粗筋と主題を大づかみし、主要批評を網羅した本書で、まず全貌を知るのも一計では。「晩年の仕事」も味わい深いです。


講談社 / 3850円 / ISBN 4065195063

■「高齢ニッポン」をどう捉えるか

浜田 陽太郎(朝日新聞社編集委員)

▼社会保障めぐるメディアの在り方 

 「ああ、そういうの、男の記者でもやるんだ」。主婦の年金問題を追っていた「くらし報道」の現場から、「権力の館」である首相官邸の記者クラブに放り込まれたとき、政府首脳から言われた言葉です。17年前、小泉首相時代のエピソードを盛り込んだ終章のサブタイトルは「社会保障のメディアリテラシー」。勁草書房のサイト内「あとがきたちよみ」コーナーで気前よく(笑)、無料公開しています。


勁草書房 / 2420円 / ISBN 4326654260

■外交回想録 竹下外交・ペルー日本大使公邸占拠事件・朝鮮半島問題

寺田 輝介(外務省出身)

▼ペルー事件、ゲリラとの交渉も紹介 

 本書はオーラル・ヒストリーの手法に基づき、中央大学の服部龍二教授の総括の下、北海学園大学の若月秀和氏、三重大学の庄司貴由氏の協力を得て完成したものである。本書では、筆者の中米局長時代に展開した対中南米政策について触れたが、本書の中核的エピソードは、筆者が直接関与した中南米関係、特にペルー関係であり、在ペルー日本大使公邸占拠事件である。本書を通じて二十数年間伏せておいた筆者とゲリラとの交渉を初めて具体的に紹介することにした次第である。


吉田書店 / 4180円 / ISBN 4905497906

■熾火 田辺清とエディが紡いだボクシングの絆

別府 育郎(産経新聞社特別記者)

▼魅力あふれる男たちの群像劇 

 ローマ五輪銅メダリストの田辺清はプロに転向し世界王者をノンタイトル戦で破るが、正式挑戦を目前に網膜剥離で視力を失い、無敗のまま引退した。悲運のボクサーと名トレーナーのエディ・タウンゼントの邂逅と失意。そしてエディの没後も彼を慕う田辺やカシアス内藤、村田英次郎、井岡弘樹ら教え子の物語を追った。エディの未亡人がママを務めるスナックのカウンターから見つめ続けた、魅力あふれる男たちの群像劇でもある。


ベースボール・マガジン社 / 1760円 / ISBN 4583113048

■マンガ万歳―画業50年への軌跡

小松 嘉和(秋田魁新報社東京支社編集部長)

▼漫画家・矢口高雄さんの半生 

 「釣りキチ三平」で知られる人気漫画家・矢口高雄さんは今年で画業50年。その節目に合わせた聞き書きで、半生をたどった。雪深い山里に生まれ、30歳で銀行員から漫画家に転身。「幻の怪蛇バチヘビ」で大ヒットし、ツチノコブームの火付け役に。その直後に発表した「釣りキチ三平」は老若男女が心酔する名作となった。まるで漫画のような波瀾万丈のドラマが満載だ。

 未完のままお蔵入りとなった「雨沼の鱗剝ぎ」の原画や、矢口さんお気に入りの短編作品も収録。心の奥底にある昭和の原風景を呼び覚ます。


秋田魁新報社 / 1430円 / ISBN 4870204142

■「社会人教授」の大学論

宮武 久佳(共同通信社出身)

▼入門「今どきの大学事情」 

 「日本の大学は大したことない」と世界ランキングが告げる。ガラパゴス・ニッポンでは「大学」も独自の進化を遂げた。日本で出世する人は「大学で勉強しなかった」ことを自慢する。だから就活学生は学力でなく「コミュ力」を最大の武器にしようとする。しわ寄せが研究者に向かう。「勉強させない国」は研究を軽視する国だ。

 解決のヒントは「もっと勉強するんだった」と嘆く社会人にある。会社と大学とを往復する大人、増えてほしい。


青土社 / 2200円 / ISBN 4791773055

■エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り

村山 祐介(朝日新聞出身)

▼壁と移民、国境の狂気の現実 

 そこでは子どもが、妊婦が、故国を追われた人々が、息絶えていく。米・メキシコ国境3200㌔に向かう移民たちの命懸けの旅の知られざる現実だ。母国からの「エクソダス」(大量脱出)を迫られた移民たちの足取りを同じ地平で歩き、その源流まで1万5千㌔をたどり、18カ国の約300人に取材した大型ノンフィクション。朝日新聞GLOBE掲載の一連のルポルタージュは2019年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞した。


新潮社 / 1980円 / ISBN 4103536519
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