2017年03月28日 10:00 〜 12:00 10階ホール
中国経済学者代表団 会見

会見メモ

*壇上左から周強武、劉尚希、畢吉耀、趙晋平、樊綱の各氏

 

財政部や国務院のエコノミスト5人が中国マクロ経済を分析した。貿易の質問に「RCEPの交渉は17年末に終わる」(趙さん)。格差を聞くと「5カ年計画で7000万人が貧困から脱却する」(畢さん)。債務の大きさを問うと「40%未満であり非常に健康的だ」(劉さん)。みなさん自信満々の答え方だった。

 

 

司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

通訳  江草裕子/張煒

 

 


会見リポート

今年の中国経済成長率に底打ちの兆し

濱本 良一 (読売新聞出身・国際教養大学教授)

日頃、中国経済を強く意識させられるのは、一挙手一投足に敏感に反応する日本の株式市場ではないだろうか。一方、論壇では「中国経済崩壊」といった極論が飛び出す。大きくぶれる背景には情報の公開性=透明性の欠如がある。

 

その意味では、中国財政省や国務院(内閣)直属シンクタンクから派遣されたエコノミスト5人が、経済分野の現状を報告した会見は中国側の努力として評価されるべきだろう。ちなみに同様の会見は昨年9月に続いて2回目である。

 

2016年の経済成長率は6.7%増だった。過去40年近い改革・開放での3大ピーク値15.2%(1984年)、14.2%(1992、2007年)と比べると半分以下で、過去6年間、連続して下降線を描き続けている。しかし、畢吉耀氏は「今年は景気の下振れ圧力が軽減し、1~2月の工業生産高や発電量、消費インフラや不動産への投資がプラスで、今年第1・四半期の成長率は昨年の6.7%を上回る見通しだ」と述べた。通年でも下げ止まる兆しなのかもしれない。

 

劉尚希氏は、投資主導から減税・企業の負担軽減へと変化する財政政策を紹介し、雇用・教育・介護・年金の充実など社会政策にも重点を置いていると強調した。

 

趙晋平氏は、3月17日に国連安保理で採択されたアフガニスタン問題決議で、「一帯一路」構想が地域経済協力を推進するものとして取り上げられたことを明らかにした。

 

日米両国が参加を見合わせるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の加盟メンバーは70カ国・地域に上り、アジア開発銀行(ADB)の67カ国・地域を上回った。周強武団長は「18年末で拡大手続きが終了するが、あと20カ国・地域が加盟申請中だ。最終的には世界最大の地域開発機関になる」と自信を示した。

 

質疑応答では、トランプ米政権の保護主義に対する率直な発言が印象的だった。樊綱氏は「人民元は、ドルとともに上昇し、過度な元安にならないようにしている。米国が中国を為替操作国と認定することはできない」と断定した。趙氏は「トランプ氏は選挙戦中に一帯一路構想に注目し、興味があると述べていた。AIIBや同構想に関して、中米両国はインフラ問題で話し合うし、協力に向けた大きなチャンスがある」と期待感を表明した。

 

米国がTPP(環太平洋経済連携協定)離脱を表明した点に関し、趙氏は「TPPが高度な貿易・経済ルール作りを目指したので中国は参加しなかったが、オープンな態度に変わりはない。発効を願っている。われわれは交渉期限が年末に迫った東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の妥結に向け、グローバル化と地域経済一体化促進のため貢献していきたい」と述べた。中国とともにRCEPに加盟する日本の役割が一段と求められよう。


ゲスト / Guest

  • 周強武 / ZHOU Qiangwu

    中国 / China

    財政部国際財経センター主任(代表団長)

  • 樊 綱 / FAN Gang

    中国 / China

    中国総合開発研究院院長 / 中国人民銀行貨幣政策委員会委員

  • 趙晋平 / ZHAO Jinping

    中国 / China

    国務院発展研究センター対外経済研究部部長

  • 畢吉耀 / BI Jiyao

    中国 / China

    中国マクロ経済研究院副院長

  • 劉尚希 / LIU Shangxi

    中国 / China

    財政部財政科学研究院院長

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