2012年01月27日 14:00 〜 15:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」  内部被曝研 設立記者会見

会見メモ

福島第一原発事故による放射線内部被曝の問題に取り組む「市民と科学者の内部被曝問題研究会」(内部被曝研)が記者会見し、内部被曝からいのちを守る研究と情報提供をよびかけた。


内部被曝研のホームページ

http://www.acsir.org/


記者会見に出席したのは、(向かって左から)岩田渉(市民放射能測定所)▽肥田舜太郎(被爆医師)▽沢田昭二(素粒子物理学)▽松井英介(放射線医学)▽矢ケ崎克馬(物性物理学)▽大石又七(元第五福竜丸乗組員)=いずれも結成のよびかけ人=の各氏。

松井さんと澤田さんが放射線の内部被曝の仕組みや科学的な知見を説明し、矢ケ崎さんが「政府がとるべき安全対策」として5項目の提言を発表した。肥田さんはヒロシマで被爆し、医師として治療にあたった経験を話した。

原発事故による放射線被曝は呼吸や飲食を通した内部被曝が中心となるが、政府と東電は内部被曝の特性や健康への影響を意図的に無視している、と批判。広島・長崎原爆でも放射性降下物の影響を無視してきた延長線上にあると指摘した。放射能汚染が高い地域から子どもを集団疎開させ、妊産婦、病人など被曝弱者の移住などの政策をとるよう政府に求めた。


司会 瀬口晴義(日本記者クラブ企画委員 東京新聞)


使用した資料:

松井英介氏

http://www.jnpc.or.jp/files/2012/01/9171730f8056aab9a5562dfd9aa6abd9.pdf

沢田昭二氏

http://www.jnpc.or.jp/files/2012/01/1cdb72375b37cd1e83fbb44a0fd2d363.pdf

内部被曝研の提言書

http://www.jnpc.or.jp/files/2012/01/afe7f753fcfb6240a2d0e4f98a4dcf63.pdf


会見リポート

科学者は市民の立場で研究を

菅野 篤司 (福島民友新聞社報道部)

東京電力福島第一原発事故の災禍は今も福島県民に大きな不安を与えている。なかでも子を持つ保護者は「放射線被ばくが子どもの健康に影響を及ぼさないか」と苦悩の日々を送っている。「市民と科学者の内部被曝問題研究会」は放射性物質を呼吸や食品で体内に取り込むことによる内部被ばくに焦点を当てる。


この日の設立会見では、広島・長崎原爆の被ばく影響調査で残留放射線による内部被ばくの影響が過少評価されているとの見解を表明し、その研究成果を参考にした国際放射線防護委員会(ICRP)の防護基準も同様の傾向があるとした。さらに、その背景には核兵器や原発推進などの政治的理由があると主張した。そのため、社会的背景を含めた内部被ばくの問題解決を目指し「内部被曝問題」の研究会にしたと訴えた。事故対応については、政府に放射線の影響が大きい子どもを守ること、安全な食品の確保、精度の高い無料の検診・医療体制の確立などを提言した。


東電事故の内部被ばくの調査は、スピード感の是非はさておき、検査が始まったばかりというのが現状だ。内部被ばくはホールボディカウンターなどで人体影響を数値化して評価する。数値を冷静に分析して判断することが求められるが、数値を示すだけでは納得されないのも現実で、数値の意味の丁寧な説明が求められている。


会見では「科学者は市民の立場で研究すべき」と指摘があった。科学で解明した部分はきちんと説明し、分からない部分はごまかさずに研究を進める。研究に時間がかかるなら、その間の被ばく量の低減対策を実行する。その当たり前のことが指摘されないと動かないのがこの国なのかと残念に思う会見でもあった。



ゲスト / Guest

  • 市民と科学者の内部被曝問題研究会(内部被曝研) / Association for Citizens and Scientists Concerned about Internal Radiation Exposures (ACSIR)

    日本 / Japan

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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