2024年01月19日 15:30 〜 16:30 10階ホール
「能登半島地震」(3) 木村玲欧・兵庫県立大学教授

会見メモ

今回の能登半島地震でも災害に関連した偽情報やデマがSNSで拡散されるケースが相次いだ。

防災心理学を専門としている木村玲欧・兵庫県立大学教授が登壇。「大災害時のデマにどう立ち向かうか」をテーマに話した。

木村さんは「大災害時に『デマ』は必ず発生する」とし、「根拠がわからないものの拡散には自分は加担しないという判断をする姿勢が大切になる」と強調。

デマ対策として組織的な対策も必要になるとし「メディアやファクト団体、プラットフォーム事業者、行政機関等が連携し、速やかにデマを検証し打ち消すような一元的な体制が求められている」と話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

デマ確認機関の設置を

前田 史郎 (朝日新聞社論説委員)

 大災害が起きた時にデマは必ず発生する。防災心理学が専門の木村教授は、それを前提に災害に立ち向かい、乗り越えるための「防災リテラシー」を磨く必要性を力説する。

 能登半島地震では、X(旧ツイッター)に「息子がはさまって動けない」という偽の救助要請や「人工的におこされた地震」「外国系の盗賊団が集結している」といった根拠不明の情報が流れた。早い段階で否定され、大きく拡散はしなかったが、「今後も形を変えて偽情報が流れる恐れがある」と警鐘を鳴らす。

 デマには悪意のある意図的なものと、誤情報・流言のたぐいがある。その量は「内容の重要さとあいまいさの積に比例する」という。一刻も早く伝えたいという不安心理の中で増殖していく。最近目立つのが、再生数をかせぐ広告収入狙いの投稿だ。進化するネット上で、「先を読んだ対応が必要」と強調した。

教授によると、「災害発生直後」「救助・救援期」「復旧・復興期」といった時間経過によりデマは変化していく。受け手が報道機関の公式サイトと照合するなどして裏を取り、怪しい情報を拡散しない習慣を根付かせることが第一という。

「転がる玉は窪地に入れば止まり、流言は知者に至れば止まる」。中国の思想家・荀子の言葉だ。「公平な心をもって考察すれば、知者の前ではついに流言も止まり、邪説も死に絶える」と、冷静な対応こそが今も重要だとする。

課題はファクトチェックだ。表現の自由もあり国が罰するのは難しいが、真偽の確認はNPOまかせなのが実態。メディア各社が行政やプラットフォーム事業者らと連携し、AIを駆使して不確かな情報をいち早く打ち消す一元的な体制を構築する必要があると教授は提言する。

 「事業者やNPOの自助努力に委ねず、安全安心は自分たちでつくるもの」。危機感をもって語った。


ゲスト / Guest

  • 木村玲欧 / Reo KIMURA

    兵庫県立大学教授 / Professor, University of Hyogo

研究テーマ:能登半島地震

研究会回数:3

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