2023年11月22日 10:30 〜 12:00 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(2) ケント・カルダー ジョンズ・ホプキンス大学教授

会見メモ

日本政治や東アジアの国際関係の専門家で、米国の東アジア外交に精通するケント・カルダーさんが、バイデン政権の対中政策と中国の受け止め方などについて話した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 池田薫 サイマル・インターナショナル


会見リポート

「ぺロシ氏訪問」前の状態に

北條 稔 (時事通信社外信部デスク)

 対立が続く米中両国は、2022年8月のペロシ下院議長(当時)による台湾訪問をきっかけとして険悪な状態が続いていた。緊張緩和が期待された23年11月の米中首脳会談の1週間後、東アジア情勢に通じた、米ジョンズ・ホプキンス大のケント・カルダー教授の記者会見が開かれた。

 カルダー教授は今回の首脳会談で、軍同士の対話再開や、米国で社会問題化している合成麻薬「フェンタニル」対策の協力で合意したことを指摘し、「少なくとも当面はペロシ氏の訪問前の状態に戻った。来年の間は(対立は)中断するのではないか」と語った。特に、バイデン米大統領の再選が懸かる選挙が来年に迫るタイミングで首脳会談が行われ、中国の習近平国家主席が米高官や財界人と幅広く意見交換したことを挙げ、「関係安定に大きなプラス」と評価した。

 カルダー教授によると、バイデン政権は、1914年に始まった第一次世界大戦のように関係国の相互理解が不足しているために戦争が起きることを恐れている。今回の首脳会談に先立ち、ブリンケン国務長官らを中国に派遣したのは、誤解によって衝突が起きることを危惧していたからだという。

 ただ、今回の会談で対立が解消したわけではない。カルダー教授は「長期的に両国関係の管理は構造的に困難だ」と分析した。米議会、特に共和党は台湾との連携を重視し、現在の米中関係を第二次大戦直前の日米関係と似たものと捉えていると説明。バイデン政権と議会は異なるスタンスを取っているが、「中国側はこの違いを理解しているのだろうか」と語り、習政権がバイデン政権の真意を見誤ることへの不安に言及した。

 一方、2024年1月の台湾総統選については「米政権が望むのは安定だ」と強調。その上で、与党・民進党の総統候補、頼清徳氏が副総統候補に選んだ蕭美琴・前駐米代表(大使に相当)は米政界に精通しており、民進党政権が継続するなら「米議会は好感する」と予想した。


ゲスト / Guest

  • ケント・カルダー / Kent Calder

    アメリカ / USA

    ジョンズ・ホプキンス大学教授 / Professor of Johns Hopkins University

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:2

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