2023年10月20日 16:30 〜 17:30 10階ホール
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官 会見

会見メモ

フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官が登壇。長期化、深刻化する難民問題の現状と、12月に開かれる「第2回グローバル難民フォーラム」で共同議長国を務める日本への期待などについて語り、ガザの現状についても触れた。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 賀来華子 UNHCR


会見リポート

危機は増す 財源は増えず

松本 紫帆 (毎日新聞社外信部)

 紛争や迫害で故郷を追われる人が世界各地で後を絶たない中、パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が10月に始まり、人道危機の懸念が深まっている。こうした中で会見に臨んだグランディ国連難民高等弁務官は「軍事活動のエスカレーションは壊滅的な結果をもたらす。速やかな停戦が望まれる」と訴えた。

 グランディ氏は2010~14年、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の事務局長を務めた経験がある。戦闘では多くの死者や避難者が出ているほか、ガザでは封鎖によって食料や燃料などが不足している。「状況は絶望的だ。今後の和平への取り組みが重要で、早期解決が待たれる」と語った。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、現在、紛争や迫害で強制移動を余儀なくされた人は世界で1億1000万人を超え、増加傾向は収まる兆しはない。そうした中、人道支援を担う機関は今、財源不足という課題に直面している。

 グランディ氏は、ロシアのウクライナ侵攻やイスラム主義組織タリバンが復権したアフガニスタンでの危機など世界各地で複数の危機や紛争が重なり合うように起きていると指摘。「危機が増す一方、財源は増えていない。世界が分断する中、人道支援の主体は立ちゆかない状態に近づきつつある」と懸念を示した。

 こうした中、来日したグランディ氏は上川陽子外相らと面会し支援増額を要請したことを明らかにした。また、日本の難民受け入れ状況についても言及し、戦争から逃れてきた人々を難民条約上の難民に準じて保護する「補完的保護」制度が新たに創設されたことを評価した。

 一方で、グランディ氏は「日本が受け入れている難民の数は限られている」とも指摘する。各地で人道上の懸念が増している中、国際社会から一層の取り組みが望まれている。


ゲスト / Guest

  • フィリッポ・グランディ / Filippo Grandi

    国連 / United Nations

    国連難民高等弁務官 / United Nations High Commissioner for Refugees

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