会見リポート
2023年09月27日
13:00 〜 14:00
10階ホール
劇作家・演出家・役者 野田秀樹さん 会見
会見メモ
劇作家・演出家・役者であり、「NODA・MAP」を主宰する野田秀樹さんが会見に臨み、文化芸術が「不要不急」とされたコロナ禍で考えたこと、この間の自身の公演活動を通じ見えてきた日本の文化政策の課題、そして自身にとって最後の夢の一つである「国際芸術祭」構想などについて語った。
司会 中村正子 日本記者クラブ企画委員(時事通信)
※YouTubeでのアーカイブ配信は終了しました。
会見リポート
最後の夢は「国際芸術祭」
内田 洋一 (日本経済新聞社編集委員)
劇作家、演出家、俳優の野田秀樹さんは演劇界のトップランナーだ。主宰するNODA・MAPの舞台は切符のとりにくさで知られ、英国でも高く評価される。2009年から東京芸術劇場の芸術監督もつとめ、コロナ禍で劇場閉鎖が相次いだ際、横断的組織「緊急事態舞台芸術ネットワーク」をつくるオピニオン・リーダーともなった。
今回注目されたのは、そんな野田さんが最後の夢の一つとして新たな「国際芸術祭」を提唱したことだ。かねて東京という都市の規模にふさわしい大きさと芸術的クオリティーをもち、世界的に注目される芸術祭が必要だと考えていたが、コロナ禍を経てその思いを強めた。
「コロナで芸術や文化がいかに社会に認知されていないかを思い知った。スポーツではワールドカップで皆が盛り上がる。そういう素晴らしい形が芸術のなかにもあれば、不要不急と言われなくなるのでは」
会場からは構想の進展状況や内容について質問が相次いだ。現状は「夢がちょっと進んだくらい」と明かした。具体的内容には踏みこまなかったが「民間にまず呼びかけたい」といい「東京に小さな拠点がいくつかある」イメージだという。既にある東京芸術祭では規模が小さすぎ、それをも包みこむ大きな枠組みを示唆した。緊急事態舞台芸術ネットワークで培われた人のつながりを生かし、ねばり強く訴えるという。
演劇人は、2020年の政府の自粛要請を日付にちなみ「2・26事件」と呼ぶ。野田さんは劇場閉鎖は「演劇の死」につながるといち早く意見書を公表したが、SNS上で身勝手などと批判された。「1ステージでも稼げないとダメージを受ける」演劇の実情への無理解を痛感したが、反論はせず社会的認知を促そうとアーカイブ事業などを推進した。芸術祭構想は「コロナによる気づき」の一つのゴールだろう。
ゲスト / Guest
-
野田秀樹 / Hideki NODA
劇作家・演出家・役者