2023年04月18日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「植田日銀の課題」(1) 永濱利廣・第一生命経済研究所首席エコノミスト

会見メモ

※YouTubeでの動画公開は終了しました。

 

4月9日、日本銀行総裁に植田和男氏が就任した。

10年間にわたる黒田日銀の「異次元緩和」をどう受け継ぎ、どう変えていくのか。植田日銀が取り組む課題を識者が整理するシリーズ「植田日銀の課題」の第1回ゲストとして、「異次元緩和」を評価してきた第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が登壇した。

永濱氏は、デフレ脱却に向けた好循環は生まれてきていると指摘。この流れを妨げることのないよう「適切なタイミングで広げた風呂敷をたたむことが課題になる」と述べ、マイナス金利解除については「早くても来春の春闘以降」との見方を示した。

 

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)


会見リポート

「風呂敷」慎重にたたむ必要

安藤 大介 (毎日新聞出版・週刊エコノミスト編集部)

 10年間続いた日銀の大規模な金融緩和が、新総裁に就任した経済学者の植田和男氏の下でどう変わるのか。新体制発足後、初めての金融政策決定会合を間近に控え、日銀に注目が集まる中での会見となった。

 「黒田東彦総裁が広げてきた風呂敷を、いかに経済の好循環をそがない形でたたんでいくかが最大の課題だ」。大規模緩和に賛成の立場をとってきた永濱利廣氏は、黒田日銀時代の金融政策について「一定の効果はあった」と改めて評価した。一方で、「金融政策で日銀がやれることは、ほぼやり尽くした」として金融政策頼みの限界も指摘した。

 今後の政策変更については、植田日銀が長期金利の指標となる10年物国債の金利を0%程度に誘導する現行政策「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」の修正や解除を年内にも実施すると予想した。植田氏が審議委員だった1999年に、日銀が世界初となる「時間軸効果(金融緩和の継続を約束することで長期金利の水準にも働きかけるという理論)」を導入した経緯にも触れ、長期金利の変動を許容する枠は取り外す一方で、「すぐには出口には向かわない」などのアナウンスとセットで打ち出すと予測した。

 一方で、明確に利上げの方向となるマイナス金利の解除については「経済への影響が大きく、相当に慎重な対応が求められる。早くて来年の春闘(の時期)以降になる」と指摘した。慎重な対応が必要な理由として、「アベノミクス」が実現できなかった経済の好循環のメカニズムが思わぬ形で実現しかけていることを挙げた。足元の世界的なインフレで企業は値上げを余儀なくされ、労働者確保のため賃上げにも取り組まざるを得なくなっている現状について「デフレで破壊された賃上げのメカニズムが再起動しかけている」と主張。「風呂敷をたたむ」には慎重な姿勢が求められると強調した。

 


ゲスト / Guest

  • 永濱利廣 / NAGAHAMA Toshihiro

    日本 / Japan

    第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト / economist, The Dai-ichi Life Research Institute

研究テーマ:植田日銀の課題

研究会回数:1

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