2023年01月19日 16:00 〜 16:40 10階ホール
ロバート・フロイド(Robert FLOYD)包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会事務局長 会見

会見メモ

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会のロバート・フロイド(Robert FLOYD)事務局長が岸田文雄首相との会談を終え、会見に臨んだ。フロイド氏は2021年1月に事務局長に就任。今回が初の来日となる。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 森岡幹予 サイマル・インターナショナル


会見リポート

核実験廃止へ作業は継続

勝井 潤 (共同通信社外信部)

 核廃絶に携わる者にとって、2022年は歯がゆい1年だったに違いない。フロイド事務局長もその一人だろう。ロシアのウクライナ侵攻で安全保障環境は激変し、ロシアのプーチン大統領は核兵器使用の威嚇を繰り返した。「もう聞くことはないだろうと思われた、過ぎ去った冷戦時代の言葉をわれわれは耳にした。核実験をなくすための作業を継続しなければならない」。言葉には力がこもっていた。

 大気圏や水中、地下を含むあらゆる空間での核実験を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)は未発効ながら、署名国は186、批准国は176と徐々に数を増している。フロイド氏は「世界的なコンセンサス」が出来上がっていると評価し、核実験をなくし核兵器の拡散を防ぐというだけでなく、核実験による人体や環境への深刻な影響を防止するという面での表明でもあると解説した。

 条約発効には核保有国の米国やインドとの交渉進展が必要だが、発効に向けた気運が高まっているとは言いがたい。フロイド氏は、バイデン米政権は条約発効を支持しているとしながらも、米国の批准には上院で3分の2の賛成が必要とされており、国内手続き上の問題がネックになっていると指摘。7回目の核実験を強行するとみられている北朝鮮については、2018年4月に表明した核実験中止の決定を、CTBT署名を通じて「長期的なもの」にするよう望むと話したが、具体的なアプローチを語ることはなかった。

 会見数時間前に会談した岸田文雄首相に関しては、核分野におけるリーダーシップを高く評価した。全てを言葉通り受け取ることはできないが、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開催地に広島を選んだ首相への期待が大きいのは事実だろう。今回の来日でかなわなかった広島訪問を年内に実現したいと語った。


ゲスト / Guest

  • ロバート・フロイド / Dr. Robert Floyd

    包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会事務局長 / Executive Secretary, Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization(CTBTO)

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