2022年12月14日 14:30 〜 16:00 10階ホール
「中間選挙後の米国と世界」(5)イランとアメリカ 高橋和夫・放送大学名誉教授

会見メモ

米国の中間選挙結果と、イランの反政府デモ、ネタニヤフ氏が復権したイスラエルの変化も踏まえ、中東情勢を展望した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

米・イラン、核合意なき後の交渉模索

岸田 芳樹 (時事通信社解説委員)

 イラン・イスラム体制が1979年に成立して以降、米国とは敵対関係にあり、核合意再建交渉はイスラエル、サウジアラビアなど周辺国の利害も複雑に絡み合い暗礁に乗り上げている。「核合意再建はかなり難しくなってきた。核合意なき後の交渉をどうするか。米、イラン両国は考えあぐねている」と述べた。

 イランの核兵器保有の可能性については「濃縮ウランだけではなく、核兵器製造には他の要素も必要になるが、そこには手を付けていない。最高指導者のハメネイ師は、核兵器を『反イスラム的』とするファトワ(宗教令)を下している」と慎重な見方を示した。

 米・イランの長年にわたる敵対関係の分析は明快だ。「イスラム体制は米国という大悪魔を必要としている。米国の脅威があるからこそ、体制の存在意義がある。大悪魔は『必要悪』であり、米国と普通の関係を持てば、イスラム体制は必要なくなるのではないか」。対立は今後も続き、「外交の役割は、戦争にならないよう管理することだ」と語った。

 対立が激化する米中関係も同様で、「米中が真に和解するのは難しく、台湾海峡で戦争が起きないよう摩擦を最小限に抑えて競争を管理することが重要になる」と論じた。

 米・イラン関係は単なる二国間関係ではなく、「イスラエル、サウジアラビアも、イランの脅威を外交的に利用している」と指摘。「中東の大国はイラン、イスラエル、トルコ。大国が影響力を競うのは普遍的現象」として、対立の根本的解消の難しさを説いた。

 イラン国内には、保守強硬派のライシ大統領に対する根強い反発がある。イスラム体制は強固に見えるが、妥協しないと体制がつぶれそうなときは妥協してきた。ハメネイ師は「英雄的柔軟性」で核合意を受け入れた。「ハメネイ師がもう一度、柔軟性を示すのか、体制は悩んでいる」と述べた。


ゲスト / Guest

  • 高橋和夫 / TAKAHASHI, Kazuo

    日本 / Japan

    放送大学名誉教授 / Professor Emeritus, Open University of Japan

研究テーマ:中間選挙後の米国と世界

研究会回数:5

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