2023年01月25日 13:00 〜 14:00 10階ホール
「レカネマブとこれからの認知症治療」岩坪威・東京大学大学院教授

会見メモ

製薬大手のエーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」が今月6日、米食品医薬品局(FDA)に迅速承認された。エーザイでは、欧州、日本での承認申請も同16日までに終えており、年内の承認を目指している。

神経病理学が専門で、認知症、アルツハイマー治療の第一人者といわれる岩坪威・東京大学大学院教授が登壇。レカネマブの特徴や有効性、これまでの新薬との違い、普及に向けた課題などについて話した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)


会見リポート

課題は発症前の早期介入

戸部 大 (共同通信社科学部編集委員)

 神経細胞が死ぬ過程を抑える初の認知症薬として国内での実用化第1号になると目される「レカネマブ」の特徴や展望を岩坪威・東京大教授が幅広く明快に解説した。

 レカネマブは、アルツハイマー病の原因とされ、脳内にたまるアミロイドベータ(Aβ)を1年半で約60%減らし、臨床試験(治験)で偽薬と比べて症状の悪化スピードを27%改善した。“成功”の要因として、試験対象を症状が進んだ人ではなく、軽症の認知症と、認知症には至っていない「軽度認知障害(MCI)」に限った「早期アルツハイマー病」の人に限定したこと、視覚的にAβの蓄積を確認できる陽電子放射断層撮影(PET)を使い、認知症ではあるがアルツハイマー病ではない人を除外したこと、脳浮腫や脳出血といった副作用を見極め、高用量の投与ができるようになったこと、繊維化する前段階で毒性が高いと考えられるプロトフィブリルという状態のAβを除去する抗体を開発したことを挙げた。

 しかし、27%にとどまった臨床効果をさらに高め、アルツハイマー病の予防的治療を実現するために、神経細胞が十分に残された「プレクリニカル期」というさらに早い時期での介入を狙った臨床研究が国内外で進められているという。

 治験では、脳血管にたまったAβが除去される過程で血管がもろくなり、液体成分が漏れてむくむ脳浮腫が12%で発症、脳血管からの微小な出血が17%(自然状態では9%)で起きた。これまで報告されている2人の死亡例にも触れ「頻度は低いが重症例が出ているのは事実。注意を払って経過を見ていかなければならない」と話した。

 承認された場合、どのような環境整備が必要かも学会などで検討されている。高額な抗体薬があまりに幅広く使われるのは現実的ではなく、病状の進行リスクの高い人やより若い年齢層での効果を追求することが大切だとの見解を述べた。


ゲスト / Guest

  • 岩坪威 / Takeshi IWATSUBO

    東京大学大学院教授

研究テーマ:レカネマブとこれからの認知症治療

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