2022年12月05日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「雇用問題研究会」(5) ジョブ型雇用とは何か 濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構研究所長

会見メモ

労働政策に詳しく、ジョブ型雇用の名付け親としても知られる濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構研究所長が、ジョブ型雇用とは何か-期待と誤解を解きほぐす」をテーマに話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

『ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機』(岩波新書、2021年)


会見リポート

ジョブ型万能論はナンセンス

池尾 伸一 (東京新聞編集委員)

 「ジョブ型は古くさい」。開口一番言い放った。

 いま世の中は「ジョブ型」ブームだ。あの会社もこの会社も「うちも導入しました」とPRする。岸田首相もNY証券取引所で「JOB型導入で生産性を上げる」と演説。コンサルタントもこの「新商品」さえ導入すれば、企業も経済もよくなると売り込むが、「ジョブ型万能論は全くナンセンス」と言う。

 「ジョブ型とメンバーシップ型は現実にある雇用システムを分類する概念にしかすぎず、どちらが優れているというものではない」からだ。

 「新商品」のようにいわれているが、「大きな誤解」。なぜなら「産業革命以来の近代社会の企業組織の基本構造は、日本以外ではずっと『ジョブ型』だった」からだ。

 ジョブ型にすると、人事制度の全てが変わる。新卒一括採用のメンバーシップ型に対して、ポストを特定して雇用するので、その職務に必要な人員だけを採用する。だれを採用するかの権限も人事部ではない。人員が必要なその部署の管理職が持つ。OJTも必要なく、採用時点で職務に相応しいスキルを持っていることが前提だ。ポストがなくなれば、解雇の正当な理由となる。

 「企業はそこまで踏み込む覚悟があるのか」と指摘。「メンバーシップ型の基本ソフト上に、ジョブ型雇用のアプリを乗せようとしている。うまくいくのか」と疑問を呈する。

 それでも流行(はや)るのは「(年功的な)職能給で高くなった中高年の賃金を、ジョブ型の名の下に切り下げる狙いも大きいのでは」。かつて流行った「成果主義のリベンジ」だ。

 ただ、メンバーシップ型も、大量の若い労働力がいてやみくもに働かせられた時代ではない、いまの日本にはそぐわない。「パワハラの培養土にもなっている」という。

 雇用システムの本質的な違いを実態に即して解説することで、改革に向けた企業と政府の「本気度」に迫った。


ゲスト / Guest

  • 濱口桂一郎 / Keiichiro HAMAGUCHI

    労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 / Research Director General, the Japan Institute for Labour Policy and Training

研究テーマ:雇用問題研究会

研究会回数:5

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