2022年10月27日 13:40 〜 14:30 10階ホール
アンティ・カイッコネン・フィンランド国防相 会見

会見メモ

日本との防衛協力促進などのために10月25日に来日したフィンランドのアンティ・カイッコネン(Antti Kaikkonen)国防相が、帰国を前に会見した。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、フィンランドはスウェーデンとともに北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請した。カイッコネン国防相は、NATO加盟の狙いを話すとともに、年内に加盟国による批准が実現することへ期待を示した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

ロシアの脅威に国防政策の歴史的転換

大内 佐紀 (企画委員 読売新聞社調査研究本部主任研究員)

 フィンランドと日本に共通するのは、やっかいな隣国ロシアという脅威だ。露軍によるウクライナ侵略という事態を受け、フィンランドは国防政策を抜本的に変えた。カイッコネン国防相はこれを「歴史的転換」と表現した。

 その帰結は、いうまでもなくスウェーデンと同時に5月に行った北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請だ。すでに30カ国中、28カ国が承認手続きを終え、残るは2カ国のみ。このうち、最大の焦点は、両国が反政府武装組織を支援していると加盟に難色を示してきたトルコの動向だ。国防相は「年内に加盟を実現したい。ただ、もう少し時間がかかるかもしれない」との見通しを示した。

 早期加盟を求める背景には、北大西洋条約第5条が定める集団的自衛権への期待がある。ただ、フィンランドは独自の国防力強化にも余念がない。

 例えば、ロシアとの約1300㌔という長大な国境線のうち、防衛上、特に重要な約200㌔にフェンスを設置する方針を固めた。また、通常の国防予算に今後4年間で計20億ユーロを上積みし、この追加分を兵器の調達や兵力の増強、予備役の訓練強化などに充て、自軍の対応能力を高めるという。

 国防相は、兵器調達に関連しては日本との協力に関心を示し、「我が国の防衛産業はサイバーなどの新分野で秀でた技術を持つ」とPRにも余念がなかった。

 膠着する戦況打開のため、ロシアが核兵器を使用する可能性については、「絶対にあってはならない」と語気を強めた上で、仮に使用すれば「非常に強力な対応策がとられる」と述べた。

 冷戦時代「フィンランド化」といえば、ある国が生き残りをかけ、軍事強国におもねる外交安保政策を取ることを意味した。フィンランドは国民的議論を経て、短い期間で舵を切った。ロシアに加え、中国や北朝鮮という脅威にさらされる日本はどうあるべきか。会見が予定より短く終了し、質問できなかったのが残念だ。


ゲスト / Guest

  • アンティ・カイッコネン / Antti KAIKKONEN

    / Finland

    フィンランド国防大臣 / the Minister of Defense

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