2022年08月24日 15:00 〜 16:30 オンライン開催
「自然災害」(1) 近年の風水害による人的被害の特徴 牛山素行・静岡大学防災総合センター教授

会見メモ

災害情報学を専門とする静岡大学防災総合センター教授の牛山素行さんがリモートで登壇。洪水・土砂災害などの風水害における人的被害の調査結果をもとに、近年の特徴を解説するとともに、災害報道に求めることなどについても話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 

※YouTubeでのアーカイブ配信は行いません。


会見リポート

地域の災害特性の把握を

中村 直人 (読売新聞西部本社社会部)

 静岡大学防災総合センターの牛山素行教授は2004年頃から、主に風水害の犠牲者の被災状況を、丹念な現地調査を通して明らかにしてきた。9月1日の「防災の日」を前に、近年の風水害の特徴を紹介するとともに、災害報道のあり方についても提言した。

 1999~2020年の風水害で犠牲となった1465人のデータを分析したところ、被災の実態と一般的なイメージは「必ずしも一致しない」ことが分かってきたという。具体的には、田畑や水路の様子を見に行って亡くなるケースは数%に過ぎない。さらに、全体の約1割は何らかの避難行動をとった後に亡くなっていた。「その地域の災害特性に応じた行動をとっていなければ、積極的にとった行動がかえってあだとなる場合もある。『被災した人は(防災への)意識が低い』というステレオタイプ的な考え方では、犠牲者は減らせない」と述べた。

 近年、被害が顕著な中小河川の氾濫に関しては、11年の紀伊半島大水害の事例を挙げ、「水は水深が深く、流速が速いと力が強くなる。山間部の中小河川は、平野部の河川よりもむしろ破壊力が強い」と述べた。特に地形分類の「低地」に当たる地域でより警戒を強めるべきという。避難については、「雨風が激しいとき、特に車で山間部の道路を通るのはやめてほしい」と呼びかけた。

 災害報道にも言及し、「複数のメディアがそれぞれの観点で取材して報じることで、情報の幅が大きく広がる。特に文字情報はデータベースを収録すると半永久的に残り、後世の人にも役立つ情報になる」と語った。被災場所や現地の地形などの客観的な情報を丁寧に報じる意義を強調した。

 日本では、自然災害による死者・行方不明者の公的な統計が十分に整理されていないという。激甚化する災害への対策を強化する上でも、国側にはより踏み込んだ実態把握が求められる。


ゲスト / Guest

  • 牛山素行 / Motoyuki USHIYAMA

    静岡大学防災総合センター教授

研究テーマ:自然災害

研究会回数:1

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