2022年08月30日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「自然災害」(2) 正しい予測、間違った想定 鈴木康弘・名古屋大学教授

会見メモ

防災の日を前に、名古屋大学減災連携研究センターの教授の鈴木康弘さんが、予測と想定の峻別、正しい予測、間違った想定などについて話した。

鈴木さんは、変動地形学、活断層論、災害地理学を専門としており、1996年から地震調査研究推進本部で専門委員。日本地理学会の理事、日本活断層学会代表理事・会長でもある。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

「結果論で思考停止しないで」

中川 和之 (時事通信社解説委員)

 鈴木氏は「真実が分かったと言うより、地震についてはどの程度分からないか、これからどうしなければならないのかを伝えたい」と前置きし、前半は著書『熊本地震の真実』から、マスコミにも誤解を改めて欲しい点を語った。

 誤解の一つとして、益城町で震度7を観測した2016年4月14日の前震と16日の本震が、「2つの断層が別に動いた」のではなく、「一つの活断層による前震と本震だった」と指摘。「まれなことではなく、活断層としては良くあることが起こった」と説明した。一方で、布田川断層では、2000年ぐらい前に活動していたことが分かったが、事前の長期評価では平均活動間隔を十倍近くも長くみており、充分に予測できていたという言い方も誤解だとした。

 後半では、熊本地震以外のことにも言及。東日本大震災を引き起こした地震は「誰もが予測していなかった想定外、という報道記事ばかり」なのは問題とし、「地震調査研究推進本部が500年周期説を発表する準備の途中で、まったく気付かなかったわけではないのは明らか」とした。東日本大震災前は、津波堆積物調査が十分でなかったことなど、過去最大の地震が分かっていなかっただけとし、想定外だったから理論上最大を考えるというのは議論のすり替えで、地震学的に理論上最大とするとマグニチュード10や11もあり得ることになってしまいかねないと指摘した。

 その上でマスコミに対して、科学的な予測は正しかったが、行政や原発の想定が誤っていた、という結果論で思考停止しないで欲しいと強調。研究はこれからも必要だが、科学だけに期待して責任を押しつけず、一方で無謬性を前提にしがちな行政も間違えることがあるとし、社会の雰囲気をレジリエントに変える役割もマスコミに期待したいと述べた。


ゲスト / Guest

  • 鈴木康弘 / Yasuhiro SUZUKI

    名古屋大学教授 / Professor, Nagoya University

研究テーマ:自然災害

研究会回数:2

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