2020年03月26日 13:30 〜 14:30 10階ホール
裁判員裁判を問う ~熊谷連続殺人事件の遺族、弁護士 会見~

会見メモ

 裁判員裁判での死刑判決が、高裁で無期懲役に減刑される事例が相次ぐ。2015年に埼玉県熊谷市で起きた連続強盗殺人事件では2019年12月、東京高裁が一審の死刑判決を破棄して無期懲役の判決を出し、高検も上告しない判断を下した。

髙橋正人、上谷さくらの両弁護士は、高検の判断に疑義を呈し、制度の問題点を指摘。

また、この事件で妻と娘2人を殺害された被害者遺族は「一番悔しいのは高検が上告しなかったこと。なぜ遺族に上告する権利がないのか」と述べ、被害者側も上告できるような制度への見直しを求めた。

司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

 

写真左から髙橋弁護士、上谷弁護士、加藤さん


会見リポート

「この国の司法は間違っている」

後藤 信広 (テレビ朝日報道局 『BS朝日 日曜スクープ』チーフプロデューサー)

 2015年9月の熊谷6人殺害事件で、妻の美和子さんと、小学生だった娘の美咲さん、春花さんの命を奪われた加藤さん(47)。「この国の司法は間違っていると思います」と問題提起した。

 一審の死刑判決を取り消した高裁判決は、「追跡者に殺害される」という被告の被害妄想を重視。「妄想を有し、精神的な不穏状態にあったことを考慮しなければ了解困難」として、犯行時、心神耗弱だったと認定した。

 加藤さんは会見で、被告が殺害したのは「お年寄りや女性、子供ばかりです」と指摘し、妄想と犯行を結びつけた高裁判決に改めて疑問を呈した。長女の美咲さんの下着には被告の精液が付着していたが、この点、高裁判決には言及がない。加藤さんは「これは“殺される”という妄想とは何ら関係ありません。その大事なところに、一切触れていませんでした。結論ありきで、ただ裁判官が個人的に死刑にしたくなかっただけだと思います」と述べた。

 さらに加藤さんは、「私が今、一番悔しいのは、検察が闘わなかったことです」と、最高裁への上告を見送った検察にも不信をあらわにした。

 加藤さんは言葉を続けた。

 「最高裁で争いたいです。現行法では無理と言われたが、諦められません」

 「やる気のない検察官に当たったら運が悪かった、諦めろとでも言うのでしょうか。この国の司法は間違っていると思います。無期懲役にするなら被害者に納得させるだけのことを言うべきです」

 「国民ひとりひとりが私の立場になった時のことを考えてほしい」

 会見には加藤さんが被害者参加制度で公判に立ち会う際、代理人を務めた髙橋正人、上谷さくら両弁護士も同席。高裁でも裁判員裁判を取り入れたり、被害者にも上告の権利を認めるよう訴えた。

 事件発生の1か月後から、加藤さんに向き合ってきた番組制作者として思う。司法には、被害者を含む、国民への説明責任はないのか。妄想による影響を重視して被告を心神耗弱とした高裁判決が、美咲さんへのわいせつ行為に言及しないとは、言葉を失う。しかも、検察が上告見送り。“被害者とともに泣く検察”ではなかったのか。


ゲスト / Guest

  • 髙橋正人 / Masato Takahashi

    日本 / Japan

    弁護士 / attorney at law

  • 上谷さくら / Sakura Kamitani

    日本 / Japan

    弁護士 / attorney at law

  • 加藤 / Kato

    日本 / Japan

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