2020年02月06日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「台湾総統選挙の分析と今後の台湾政局」小笠原欣幸・東京外国語大学大学院准教授

会見メモ

第1回台湾総統選からの歩みをまとめた『台湾総統選挙』(晃洋書房)を昨年11月に出版した小笠原欣幸・東京外国語大学大学院准教授が、1月11日に行われた選挙の分析と今後の展望を話した。

司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 『台湾総統選挙』(晃洋書房)

小笠原教授HP

東京外国語大学教員紹介ページ


会見リポート

台湾アイデンティティーの広がりと習指導部の手詰まり

川瀬 憲司 (日本経済新聞社編集委員)

 1月の台湾の総統選挙では、独立志向の与党・民主進歩党が再び勝利した。立法院でも過半数を確保し、蔡英文政権は次の4年間も安定した政権運営基盤を有権者から与えられた。

 1996年の第1回から台湾の民主選挙を研究し続ける小笠原欣幸・東京外国語大学大学院准教授は今回の選挙について、民進党が前回得た「安定したリードを固めた」と述べた。蔡氏は2016年よりも高い57%の得票率に加え、過去最多の817万票の得票を集めた。

 その主因について小笠原氏は「突き詰めると、台湾アイデンティティーが広がったため」。中国の習近平主席が昨年1月の演説で改めて提起した「一国二制度」による台湾統一を明確に拒み、その枠組みの下で中国への反発を強める香港民主派との連帯を示した蔡氏や民進党が、さらに支持を固めたという評価だ。

 一方、最大野党の国民党は、共産党との提携関係による「親中」路線から抜け出せず、台湾アイデンティティーとの相性は悪くなるばかり。一昨年11月の統一地方選では大勝したが、小笠原氏は「地方選挙と国政選挙ではイシュー(争点)が違う」と指摘。目先の政策が影響する地方選とは異なり、総統選は「台湾の方向やあり方を決める」との位置づけだ。

 2年後の次の統一地方選でも、立法院で勢力を伸ばした民進党でも国民党でもない、所謂「第3勢力」が大きな変数となる可能性がある。しかし、24年の総統選について現状では、民進党優位は動かないとの見立てだ。

 習指導部はどう出るのか。盟友・国民党の国政選挙での連敗など、台湾政策は成果を挙げていない。「台湾の民意を重視していない」のは明らかで、抜本的な政策見直しが必要だが、小笠原氏は「手詰まり」とみる。21年の共産党創設百年や22年の党大会を控え「強国」ぶりを演出する必要がある習氏から、台湾政策での新機軸は考えにくい。


ゲスト / Guest

  • 小笠原欣幸 / Yoshiyuki Ogasawara

    日本 / Japan

    東京外国語大学大学院准教授 / associate professor, Tokyo University of Foreign studies

研究テーマ:台湾総統選挙の分析と今後の台湾政局

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