2020年01月27日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(40) 東郷和彦・京都産業大学教授

会見メモ

外務省で在ロシア公使、条約局長、欧亜局長、元駐オランダ大使などを務めた東郷和彦・京都産業大学教授が登壇し、元外交官の目から、日韓関係改善に向けた方策を話した。

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

 


会見リポート

「混迷の日韓、『視点の転換』を」

清水 大輔 (朝日新聞社国際報道部)

 国交正常化以降で最悪と言われた日韓は昨年末、1年3カ月ぶりに首脳会談を実施した。元徴用工問題をめぐり安倍晋三首相は韓国側の責任で解決策を示すよう求め、韓国の文在寅大統領は早期解決の意思を示した。ただ、具体策は示されず、平行線の状態は変わらない。

 そこで、ロシアを中心に外交の現場を踏んできた東郷和彦氏が提案したのは「視点の転換」だった。

 まず歴史を俯瞰する必要性に触れた。自身のルーツが文禄・慶長の役の際に朝鮮から連れてこられた陶工にあることなどに触れた上で、日韓問題の根っこにある韓国併合について見つめ直す「手がかり」を示した。自ら「驚く人が多いのでは」と断った上で挙げたのは「安重根」だった。

 伊藤博文を暗殺し、日韓で「テロリスト」「英雄」と評価が割れる。ここで東郷氏が強調したのは、安倍首相の外交政策ブレーンを務め「親米保守」の論客だった岡崎久彦氏も、日中韓共同での銀行や軍隊の設立など東洋人の団結を訴えた安に共鳴していたという点だった。

 相対的な捉え方は歴史だけではなく「地政学的にも大事だ」と述べた。米中による覇権争いが激化する中で「日韓問題は一つの外交問題に過ぎない」とした上で、最も重要な米中と共存していくために必要なことは、一つでも多くの友好・提携国であり「この地域で第一の候補が韓国だ」と断じた。

 日韓慰安婦合意で設立された「和解・癒やし財団」の解散など「ゴールポストをすぐ動かす」といった批判が向けられる韓国。外務省時代に条約局長を務めた東郷氏も元徴用工問題を巡る大法院判決には批判的だ。ただ、「解決済み」という一つの答えしか持ち合わせない日本の外交姿勢にも不満をにじませた。複眼的な視点の提示はメディア側への宿題でもあると受け止めた。


ゲスト / Guest

  • 東郷和彦 / Kazuhiko Togo

    日本 / Japan

    京都産業大学教授/元駐オランダ大使 / professor, Kyoto Sangyo University/former Ambassador to Nederland

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:40

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