会見リポート
2019年08月28日
10:30 〜 11:30
10階ホール
ジナウイ・チュニジア外相 会見
会見メモ
第7回アフリカ開発会議(TICAD7、8月28~30日横浜)のために来日中のチュニジアのケマイエス・ジナウイ外相が会見した。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
通訳 富永恵子(サイマル・インターナショナル)
会見リポート
民主主義は手に入れたが…
松尾 圭介 (時事通信社外信部編集委員)
11月に予定されていたチュニジア大統領選は、7月25日にカイドセブシ大統領が死去したため、投票日が9月15日に繰り上がった。選挙戦で騒がしい国内を離れ、横浜市で開かれた第7回アフリカ開発会議(TICAD)のため来日した。
「大統領選には当初、97人が立候補したが、書類審査で26人に絞り込まれた」「異議申し立てが3人認められたというから、29人で争うことになるかもしれない」。投票まで3週間を切った。最新の選挙情勢を語る口調は滑らかで、笑顔を絶やさない。「2011年の『アラブの春』の唯一の成功例」と呼ばれる栄誉に包まれ、若い民主主義国家の希望に満ちた明るさが表情からうかがえる。
「若い国家」と言っても、民主主義の話だけで、チュニジアの歴史は古い。世界史で習った「カルタゴ」こそはチュニジアだ。19世紀、フランスに支配され、1956年に独立した。初代ブルギバ大統領が30年間、続くベンアリ大統領が23年間も居座ったから、アラブの春までに大統領は2人しかいない。
ようやく手に入れた民主主義。自由になった喜びは確実に広がっているようで「政党は今、217ある」「テレビは17局、ラジオは40局かな」「電子媒体のメディアが60ある」と外相は数字を並べた。「60年間、テレビは1局しかなかったのに」「大統領が独りで全部決めていたのに」と65歳の人生と重ねて振り返った。
しかし、浮かれてばかりはいられない。メディアが増え競争も激化した結果「偽ニュースが増えた」。アラブの春の発火点となったのは、若者の失業が背景にあった。民主主義は手に入れたが「経済の成功はまだ手に入れていない」。不満は社会に根深く残っており、経済成長という民主化の果実を早くつかみ取りたい。TICADで何かつかめただろうか。
ゲスト / Guest
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ケマイエス・ジナウイ / Khemaies Jhinaoui
チュニジア / Tunisia
外相 / Minister of Foreign Affairs