2019年09月18日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「プラットフォーマー規制の論点」(4) プラットフォームと競争政策 杉本和行・公正取引委員会委員長

会見メモ

公正取引委員会の杉本委員長が登壇し、デジタル市場における競争政策の在り方を語った。

 

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

成長戦略実行計画

 


会見リポート

情報のクオリティー確保が次の課題

上杉 素直 (日本経済新聞社コメンテーター)

 暮らしと社会のデジタル化に伴い、膨大なデータが日々蓄積され流通している。フェイスブックのユーザーは20億人を超え、グーグルのクリック数は年2兆回に達する。そこに今、競争力の源がある。

 では、ビジネスの形が劇的に変わる中で、競争政策はどうあるべきか。「アマゾンから送られてきた商品の段ボールを片付けるのが私の日常」と自身の生活ぶりを紹介しつつ、記者会見の終了予定時間を過ぎてもじっくり語ってくれた。

 勝者総取りの色彩が濃く、大型設備を必ずしも必要としない。そうした特徴を持つデータビジネスは寡占が生まれやすい、と指摘した。市場支配力をもつプラットフォーマーが不当なデータの収集や囲い込み、取引相手に不当な不利益を生じさせる行為に及べば、独占禁止法上の問題になりかねない。

 根底に流れるのは、社会の発展には企業が引き起こすイノベーションが欠かせないという思想。「企業は株主のためだけにあるのではない。その存在価値は、消費者のニーズをいかに満たすかにある」。記者会見の冒頭でそんな考え方を示し、ニーズをつかもうとする競争やイノベーションを滞らせる弊害を強調した。

 例えば、無料のネット検索を利用する個人は、金銭のやり取りがなくても、プラットフォーマーが広告を取り次ぐビジネスの「部品」を提供していることになる――。データそのものが価値をもつ時代の特殊さを「部品」という言葉を使って言い表した。まったく新しい発想が当局にも利用者にも求められているということだろう。

 記者会見の結びには、情報の重要性が高まるのに合わせ、そのクオリティーを確保しなければならないと訴えた。インターネットにあふれるフェイクニュースやヘイトスピーチ、犯罪をあおる情報をいかに排除するかを次の課題に挙げた。私たちメディアの在り方にも関わる問題提起だった。


ゲスト / Guest

  • 杉本和行 / Kazuyuki Sugimoto

    日本 / Japan

    公正取引委員会委員長 / Chairman, Japan Fair Trade Commission

研究テーマ:プラットフォーマー規制の論点

研究会回数:4

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