2019年06月14日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「デジタル時代の選挙介入」川口貴久・東京海上日動リスクコンサルティング戦略・政治リスク研究所主任研究員

会見メモ

2016年の米大統領選で行われた選挙介入の手法や諸外国での選挙介入の事例を紹介。デジタル時代の介入の特徴として(1)匿名性が高い(2)より早く、より大量に、より安く(3)SNSは個人データが蓄積されるため効果的 と解説し、行政、立法、メディア、プラットフォーマー、有権者による総合的な対策が必要、と指摘した。

 

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

川口氏の論考「現代の選挙介入と日本での備え」(東京海上日動リスクコンサルティングHP)


会見リポート

新たな内政干渉の脅威

橋詰 悦荘 (時事通信社編集局次長)

 サイバー空間を舞台にした新たな内政干渉が、始まっている。2016年の米国大統領選で確認されたロシアによる大規模な選挙干渉。その後もフランス大統領選(17年5月)、ドイツ連邦議会選(同9月)―など続いているという。

 民主主義を支える選挙。その根幹部分が、サイバー空間からの攻撃にさらされている。国境が存在しない、サイバー空間には安全地帯もない。

 川口氏らは、ネット上に公表された米国の各情報機関の資料を読み解き、選挙干渉への手口を再現した。米大統領選の場合、その始まりは、クリントン選対事務所の最高幹部が受け取った「フィッシングメール」だった。パスワードの変更を求める、一見して怪しいメール。「怪しいね」とスタッフに相づちを求めるメールを送信したが、スタッフが打ち間違えて「メールは大丈夫です」と返信。その結果が機密情報の大量の流出とその暴露につながった。クリントン陣営の順当な勝利という予測を引っくり返す事態へ展開した。

 ロシアの意図は何だったのか。各情報機関の共通する指摘は「米国の民主プロセスに対する公衆の信頼をおとしめること」「合意形成を困難にするための社会分断」と分析した。

 こうした効果的な選挙介入を実現させたのは、本来は友達づくりを目的に広まったSNSの存在。高い匿名性、情報が「安く」「早く」「大量に」届くという特性。この機能が選挙介入を可能にした。選挙過程やシステムへ攻撃した、という痕跡さえあれば選挙の正当性に傷を付ける目的は容易に達せられる。

 外国勢力からの日本の選挙への介入は現時点では確認されていない。ただ、世論を二分するような憲法改正の国民投票は狙われる可能性がある。その攻撃には備えなければならない。その防御を始める時期に来ている。今でしょう! 分断を決定付けてからでは遅い。


ゲスト / Guest

  • 川口貴久 / Takahisa Kawaguchi

    日本 / Japan

    東京海上日動リスクコンサルティング戦略・政治リスク研究所主任研究員 / senior consultant, research institute for strategic and political risks, Tokio Marine & Nichido Risk Consulting

研究テーマ:デジタル時代の選挙介入

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