2019年06月10日 16:00 〜 17:00 10階ホール
アグネス・チョウ(周庭)香港デモシストメンバー 会見

会見メモ

「香港衆志(デモシスト)」の中心メンバーであるアグネス・チョウ(周庭)さんが、中国本土への容疑者移送を可能とする「逃亡犯条例」改正案の撤回を訴えた。

 

司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

「香港をあきらめない」

冨坂 範明 (テレビ朝日外報部)

 2014年の「雨傘運動」などで主要な役割を果たし、香港の民主化運動の「女神」として、象徴的な存在である周庭さんが、香港政府が改正を目指す「逃亡犯条例」の危うさについて会見した。

 前日には、主催者発表で100万人以上が参加した香港返還後最大規模のデモが行われ、周さんも参加した。なぜ多くの人が反対するのか? 周さんは端的に「返還後最も危険な法案だからだ」と懸念を示した。

 条例が改正されれば、中国本土への容疑者の引き渡しが可能になる。「一国二制度」の名のもと、高度な自治が認められているはずの香港に、実質的に中国の法律が適用される懸念が強まるのだ。周さんは、香港人のみならず、日本の観光客や駐在員にも恣意的な法の執行の懸念があると強調し、国際社会に連帯を訴えた。

 私は13年から4年間、特派員として北京に赴任したが、中国に「法の支配」があるとは言い難い。最たる例は日本人の「スパイ事案」で、被疑事実は一切公にされず、身柄が拘束され、実刑判決が下されている。

 香港政府は、デモの民意など意に介さず、条例を改正する意向だ。周さんのような民主活動家は真っ先に狙われるだろう。会見でも「怖い」という言葉を何度も使った。私は少し意地悪だと思いつつ、「条例が変わっても、香港にとどまりますか?」と聞いてみた。

 周さんは巨大な中国政府を相手にすることは「しんどい」と、率直な感想を述べた後、「私が一番好きな場所は香港です。香港は私の家だから、簡単にあきらめません」と、自分に言い聞かせるように答えてくれた。そして、「試してみないと分からない。分からないから、試さないとだめだと思います」と言葉を続けた。

 屈託のない香港の22歳の女性が、日本語で紡いだ真っすぐな言葉に、自分が試されているような気がした会見だった。(その後条例改正は延期となった)


ゲスト / Guest

  • 周庭(アグネス・チョウ) / Agnes Chow

    香港衆志(香港デモシスト)メンバー

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