2019年05月28日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「アイヌからみた北海道150年と新法」 石原真衣・北海道大学大学院専門研究員

会見メモ

母方の曾祖母がアイヌ。現代アイヌ民族を研究する。「和人かアイヌか」の二項対立の図式でアイヌに分類され、「あいだ」の存在である自身は理解されず「沈黙し、声を失った」。無数の「あいだ」を可視化することが、「つながりを生み、発展につながる」。

 

司会 近藤浩 日本記者クラブ企画委員(北海道新聞)

 


会見リポート

歴史含め理解し、違い認める重要性を強調

尾張 めぐみ (北海道新聞東京報道センター)

 5月24日に新法「アイヌ施策推進法」が施行されたことを受け、アイヌ民族について研究している石原氏が会見した。日本では外国人の増加で「多文化共生」が掲げられているが、国内にも様々なルーツを持つ人々がいることには目が向いていない。石原氏は「日本の多様性を明らかにすることは日本を分断するのではなく、これからの社会を発展することにつながる」と述べ、違いを認め合った上で対等な関係を築く重要性を訴えた。

 石原氏は母方の曽祖母がアイヌ民族で、父方の祖先は北海道開拓の中心となった屯田兵(和人)という二つの出自を持つ。日本では「アイヌ民族か和人か」の枠組みしかなく、アイヌ民族について発言すると「おまえはアイヌだ」「アイヌじゃない」「日本人だ」「日本人じゃない」と言われ、心が痛んだ。その痛みとは何か考えることが、自身の研究につながっていった。

 差別や偏見がある中、家族同士ですらアイヌ民族の話題は話せなかった。そのため他のアイヌ民族とも仲間意識を共有できなかった。今年は北海道命名150年。それは、アイヌ民族が土地や生業を和人に奪われてからの時間を指す。石原氏は「私たち家族は150年、差別や出自をめぐる混乱などの痛みを継承してきた」と話した。

 1997年に制定された「アイヌ文化振興法」や、今年施行された「アイヌ施策推進法」は、アイヌ文化を限定的に捉えていると指摘。文化とは本来、文字や宗教、教育、風習など人間の暮らし全てを指すものだが、現状では歌や踊りなど、多数派に害のない「管理された文化」が注目されている。一方で、アイヌ民族の血を引いていても文化を受け継いでいない人にとっては「私はアイヌ民族ではない」と感じることにもつながっている。

 「一部の文化だけを受け入れるのではなく、痛みを共有することも必要」と石原氏。歴史を含めて深く理解し、文化の違いを認め合うことが多文化共生社会につながると強調した。


ゲスト / Guest

  • 石原真衣 / Mai Ishihara

    日本 / Japan

    北海道大学大学院文学研究院専門研究員 / Hokkaido University graduate school

研究テーマ:アイヌからみた北海道150年と新法

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