2019年04月16日 16:00 〜 17:00 9階会見場
カトゥルガロス・ギリシャ外相 会見

会見メモ

今年は日ギリシャ外交関係樹立から120年。カトゥルガロス氏は2015年のチプラス政権発足時から閣僚を歴任し、今年2月に外相に就任した。ギリシャ外相の訪日は23年ぶりで、経済・政治面での二国間関係の発展に意欲を示した。

「EUを支持するが、加盟国間の格差拡大につながる財政緊縮政策には反対」「中国の投資に対する安全保障上の懸念はギリシャも共有しているが、欧州・アジア・アフリカの中心という地理的優位性を活かして物流のハブとなることを目指すギリシャの政策と、一帯一路は合致している」

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事・事務局長

通訳 森岡幹予(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

財政危機からの復活強調 今後は地域安定にも一役

寺西 和男 (朝日新聞社経済部)

 「欧米民主主義世界において史上最も深刻な危機を克服した」。ギリシャ外相として23年ぶりの来日となったヨルゴス・カトゥルガロス氏が記者会見でまず強調したのは、財政危機からの復活だ。

 財政赤字隠しをきっかけに危機に陥ったギリシャが欧州連合(EU)などから金融支援を受け始めたのが2010年。支援は昨年夏にようやく終了した。この間、ギリシャは増税などの財政緊縮策に加え、行政や年金システムの改革を実施。「経済モデルの変革を図ってきた」とし、経済成長を取り戻したと紹介した。

 中東から欧州への玄関口にあたり、地政学的にも重要なギリシャは自国の危機を抜け出した今、地域の「安定装置」の役割を担おうとしている。外相は、長年の懸案だった隣国の旧ユーゴスラビアのマケドニアとの間で「北マケドニア」への国名変更で合意したことに触れ、「真摯な話し合いでウィンウィンの関係を迎えられる」と強調。中東の安定化にも貢献していく考えを示した。

 欧州ではEUや共通通貨ユーロに懐疑的な政治勢力が台頭し、さらなる統合に逆風が強まっている。EUへの反発について「中産階級の生活水準が下がる中、スケープゴートとして標的になった」と解説。「グローバル化が進む新たな時代に、自分たちの存在感を出し続けるにはEUが唯一の道」と述べ、米中などの大国と渡り合うEUの重要さも訴えた。

 ギリシャ危機の際には、先進国で最悪の政府債務を抱える日本も「いずれ危機に陥るのでは」との議論が交わされた。「危機の教訓」を尋ねたところ、両国の違いに触れつつ、「共通する解決法のレシピがあるならば、経済成長しかないということ。その恩恵は広く拡散することを担保しなくてはならない」との回答があった。財政再建で苦しんだギリシャだけに、次は、今も借金を積み重ねる日本への警鐘を聞いてみたい。


ゲスト / Guest

  • ヨルゴス・カトゥルガロス / George Katrougalos

    ギリシャ共和国 / Hellenic Republic

    外務大臣 / Minister for Foreign Affairs

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