会見リポート
2019年04月17日
15:00 〜 16:00
10階ホール
エルーミ駐日チュニジア大使 会見
会見メモ
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
通訳 大野理恵(サイマル・インターナショナル)
会見リポート
「成功」招いた初代大統領の遺産
平田 篤央 (朝日新聞社論説委員)
いわゆる「アラブの春」はその後、多くの国で混乱や紛争を生み、冬の時代を迎えている。その中で、民主化運動の発火点となったチュニジアは、唯一の成功例と言われている。当然のことながら、エルーミ大使の会見はまず、この8年の振り返りから始まった。
20年以上にわたるベン・アリ政権を倒した「ジャスミン革命」後の最初の課題は、いかに民主的な制度を作るかだった。さまざまな勢力がそれぞれの国家像を主張し、困難な状態に陥った。
ここでチュニジアでは、労働団体や弁護士会など4団体が結成した「国民対話カルテット」が仲介役を果たした。2014年に新たな憲法が制定され、議会選挙、大統領選挙が行われる。大使は「これにより、よちよち歩きだが民主的制度ができた」と強調した。カルテットは翌年、ノーベル平和賞を受賞した。
革命後の方向性の違いが対立を生んだのはどこも同じだったろう。だが、ほかの国ではそれが軍の介入や内戦状態への転落などにつながったのに、なぜチュニジアはうまくいったのか。
大使は最初に「地中海の中心にあり、文明のゆりかごとして3000年の歴史を持つこと」を挙げた。だが、これには「もっと歴史の長いエジプトでは失敗したではないか」という反論が聞こえてきそうだ。
おそらく大事なのは、さらに大使が指摘した「独立後の初代ブルギバ大統領が重視した3つの分野」だろう。16歳までの義務教育、医療や保健への投資、女性のエンパワーメントである。
これらは、国連開発計画(UNDP)が「アラブの春」以前に発刊した「アラブ人間開発報告書」の指摘と重なるところがある。この点で、確かにチュニジアはアラブ諸国の中では例外的な存在だったと言えるのかもしれない。
ゲスト / Guest
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モハメッド・エルーミ / Mohamed Elloumi
チュニジア / Tunisia
駐日チュニジア大使 / Ambassador, Republic of Tunisia