2019年04月04日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「中東取材40年」脇祐三・日本経済新聞特任編集委員

会見メモ

 中東の政治、宗教、経済を総合して分析できる第一人者が中東の40年の変化を語った。

 1979年のイスラム革命から各国に生じた矛盾の連鎖、経済環境の変化、イスラム社会の変化、デジタル化と言論統制などさまざまな角度から、いまの中東を描き出した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

中東の変化に日本は鈍感 現地情報の盲信が一番危険

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社特別編集委員)

 斟酌なしの発言は、今の中東を誰よりも知っているという自負からに違いない。誰の目も気にせず自らの判断を率直に語り、当たったら良いし、外れたら悔やむだけ。そんな潔さを常に感じさせるジャーナリストだ。

 心に残った話がいくつかある。

 「日本人の中東イメージは1970年代で止まったままだ」。パレスチナ・ゲリラ、イラン革命、日本赤軍。そんなイメージを超越して中東は新しい顔を見せている。例えばアラブの国々では人口の60%が30歳未満。彼らは日本人が無条件に支持する民族解放運動の中東を知らない。

 今は、汎アラブ主義は風化し、それぞれの国々が「自国第一」であるし、かつての資源ナショナリズムのこだわりもない。サウジアラビアがカタールと断交してイスラエルと裏で手を握り、イスラエルは日本より豊かで、中東ではまさに独り勝ちだ。

 もはや世界最大の産油国は米国であり、世界の日量石油消費量1億バレルの中で3000万バレルを担うだけの石油輸出国機構(OPEC)の威光などない。今や財政ひっ迫で外国からの投資資金を欲しがり、そこを中国が付け入って進出している。

 一方で40年前に比べてスカーフを職場で着用する女性は確実に増えており、汎アラブ主義、社会主義が崩れた後に、人々は帰属意識をイスラムに求める。デジタル社会が急速に広まる現代化とイスラムの共存は中東の行く末を混とんとする。

 「中東で一番危ないのは現地情報」。アラブ人は日本人記者の質問に、おもてなしの心で答える。事実がどうあれ記者が聞きたい発言をサービス精神でしてくれる。だから、そうした発言を基に書くと間違える。

 大事なのは「個別のファクトを頭の中の座標で整理して積み重ねることだ」と言う。国際取材の黄金律と受け止めた。この日の話も豊富な社会・経済統計を基に、40年間の蓄積の座標軸で分析したものばかりだった。


ゲスト / Guest

  • 脇祐三

    日本経済新聞特任編集委員

研究テーマ:中東取材40年

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