会見リポート
2019年03月29日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「平成とは何だったのか」(17)原武史・放送大学教授
会見メモ
「平成の終焉-退位と天皇・皇后」(岩波新書)を3月に刊行した原武史・放送大学教授が平成時代の天皇のあゆみを語った。
司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
会見リポート
天皇が民意形成の主体に
刀祢館 正明 (朝日新聞編集局)
17回目は近現代の天皇・皇室の研究者で『平成の終焉――退位と天皇・皇后』(岩波新書)を今年3月に出した原武史・放送大学教授を迎えた。
今の天皇・皇后にとって平成とは何だったのか。原さんは、お濠の中では「国民の安寧と幸せ」を祈り(宮中祭祀)、お濠の外では「日本の各地」を「旅」して回る(行幸啓)、この二つを「象徴天皇の務め」として重視した30年だったとみる。
宮中祭祀も行幸啓も、配布された資料を見るとその数の多さに驚く。父親の昭和天皇とは大きく異なるという。
退位が具体的に動き出す直接のきっかけは2016年7月13日のNHKの特報だった。それまでほとんど語られることがなく、官房長官は否定したが、8月8日の天皇自身による「おことば」以降、一転して特例法制定など政治プロセスが動き出す。
「この間(政府や宮内庁に)何があったのか。天皇本人が2010年に譲位の意向を口にしていたという証言も報じられている。しかし歴代内閣は手を付けなかった。それはなぜなのか。新聞は検証してほしい」
国民一般も「おことば」を境に退位賛成に「ころっと」(原さん)変わった。「これは1945年8月の玉音放送と同じ。それまで一億火の玉だ、本土決戦だと言っていたのに、一転して敗戦を受け入れた」
両者に共通するのは「天皇が民意を形成する主体になっていること」という。このことが報道する側にどれだけ意識されているだろう。
天皇はテレビを通じた「おことば」で自ら「象徴天皇の務め」を提示したが、このこと自体に問題はないのか。原さんは鋭い疑義も投げかけた。
5月に新天皇が誕生する。天皇のあり方は変わるだろうか。
「明治から大正、大正から昭和、昭和から平成と、いずれも天皇像は大きく変化した。今度も変わるだろう。新しいスタイルが出てくるのではないか」
ゲスト / Guest
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原武史 / Takeshi Hara
放送大学教授、明治学院大学名誉教授
研究テーマ:平成とは何だったのか
研究会回数:17