2019年02月18日 14:00 〜 15:15 10階ホール
「ジャーナリストが見たインドの経済格差」パラグミ・サイナート氏

会見メモ

インドのジャーナリスト、パラグミ・サイナート氏が、インドの農村の苦境、経済格差の広がりについて話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)

 

パラグミ・サイナート氏

People’s Archive of Rural India


会見リポート

経済成長で都市と農村の格差拡大

原田 健男 (山陽放送出身)

 急激な経済成長をしたBRICS5カ国に含まれるインド。インドのムンバイに拠点を置くジャーナリスト、パラグミ・サイナートさんによると、インドで元々大きかった格差が近年ますます拡大しているという。インドの人口は約13億1700万人でGDP(国内総生産)は世界6位となったが、一人当たりGDPは年間約20万円で143位に止まっている。その大きな理由はカースト制度等もあり富裕層、中間層、貧困層間の格差が大きいことが関係している。その格差の大きさは、富裕層上位1%の資産が国全体の資産に占める割合の実に52%にのぼり、タイ、ロシア、トルコに次いで世界4位となっている。(ちなみに日本は19%)

 サイナートさんは農村部の社会的辺境に置かれた人々に光を当てたリポートをインド国内の新聞や週刊誌等に執筆してきたが、近年、新自由主義の導入で農業金融が種や肥料の会社や農業に参入する民間会社等に重点的に割り当てられ、小規模農家への割り当てが減って農家はますます資金不足となり債務が増えて自殺者も増加しているという。インドは工業化とIT産業化が進んでいるとはいえ、国民の64%は農業に従事しており、平均的農家の所得は一カ月に9300円しかないそうだ。

 ではどう改革するのか。サイナートさんは組合による集団農場を提言している。行き過ぎた自由化が農民を困窮させているとして社会主義化による農業復活が必要というわけだ。

 日本などはかつて工業化で農村人口を吸収して国民所得向上を図ったが、インドは農村人口が多過ぎて難しそうではある。世界各国の経済成長が鈍化する中、かつての社会主義的手法への回帰で格差拡大を止めることができるのか、インド国内での論議が続きそうだ。


ゲスト / Guest

  • パラグミ・サイナート / Palagummi Sainath

    インド / India

    ジャーナリスト / Journalist

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