2018年11月08日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のケネス・ロス代表 会見

会見メモ

非営利の国際人権組織ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表が、ミャンマーでのロヒンギャ危機やカンボジア政府の強権的な姿勢をはじめ世界の人権状況について話し、日本がとるべき姿勢について話した。

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチ

ロス氏略歴(HRWサイト)

 

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)

通訳 池田薫


会見リポート

独裁者を支えかねない日本の「静かな外交」

杉本 宏 (朝日新聞社出身)

 日本の「静かな外交」は、結果的に独裁者を支持し、人権侵害を黙認することにつながりかねない――。ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は会見の冒頭、こう警告し、声を上げて人権侵害の当事国に改善を求めることの重要性を訴えた。

 ロス氏によれば、人権侵害をなくすには、その代償は高いと身をもって当事国に知らせることだ。そのための最善の方法は、「政府の評判に傷をつけることだ」。

 この点、「日本の外交官が一生懸命やっている静かな外交」では限界があるという。

 こうした一般論を披露したうえで、ロス氏は日本の人権外交を個別・具体的に採点した。まず、北朝鮮。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、北朝鮮の政府当局者による女性への性暴力に関する報告書を発表したばかり。ロス氏は、拉致問題だけでなく、北朝鮮政府の自国民に対する人権蹂躙についても声をもっと上げるよう求めた。

 フンセン首相が独裁色を強めるカンボジアをめぐっては、最大野党が解党されたなかで行われた7月の総選挙を取りあげ、日本の対応を批判した。選挙の正当性を認めることになりかねないとし、選挙監視団の派遣を控えた主要国と足並みをそろえ、日本は派遣こそしなかったが、提供した投票箱がどう使われたかをモニターする名目で技術要員を送ったという。日本は国際社会にもフンセン首相にも顔を立て、「いいとこ取りをした」とロス氏は手厳しい。

 ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの迫害問題でも、国連人権理事会が9月に人道犯罪の追及に向けて独立調査機関の設置を求める決議を採択した際、日本が棄権したことを問題視した。日本は大島賢三元国連大使がメンバーのミャンマーの独立委員会をより重視しているが、そこの調査では「何も変わらない」と釘をさした。

 サウジアラビア主導の連合軍による空爆で人道危機に陥ったイエメン情勢への対応についても「日本にかなり失望した」とロス氏。国連人権理事会が9月に戦争犯罪に関する調査を1年延長する決議を採択したが、日本は棄権した。「サウジがちらつかせた経済制裁を、多くの国は無視した」と日本の経済利益優先の姿勢を批判した。

 日本政府には、関与政策によって当事国を改善の方向へ導くという考え方が根強い。だが、ロス氏の主張を聞いて、人権侵害に限れば、「静かな外交」では中国やロシアの外交と大同小異というイメージを植え付けかねないと思った。そもそも、ジェンダー平等や子どもの貧困問題などで遅れている日本に人権で声高に他国に注文をつける資格があるのかとも思った。人権外交を展開するには、足元を固めることも重要ではないか。


ゲスト / Guest

  • ケネス・ロス / Kenneth Roth

    ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表 / Executive Director , Human Rights Watch

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