2018年06月14日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「平成とは何だったのか」(4)平成の事件・疑獄史 宗像紀夫・元東京地検特捜部長

会見メモ

平成に入って特捜副部長としてリクルート事件を指揮、93年には同部長としてゼネコン汚職事件などの捜査を指揮した宗像紀夫さんが、リクルート事件から始まった平成の事件史を振り返った。

 

司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

特捜復活へ「失敗を恐れるな」

市田 隆 (朝日新聞社編集委員)

 「日本最強の捜査機関」と呼ばれた東京地検特捜部の中枢にいた元検事が、2004年に退官してから久しいとはいえ、過去に手掛けた事件の内幕を公開の場で話すのは非常に珍しく興味深い内容だった。また、政官界への捜査を得意とした特捜部の存在感が薄れている中で、宗像さんは「失敗を恐れるようになった」ことの弊害を語り、特捜部がそこから脱却することに期待を寄せた。

 中央政界に波及したリクルート事件、ゼネコン汚職事件という大型事件で宗像さんは捜査の中心にいた。リクルート事件で未公開株譲渡が賄賂にあたると判断した経緯や、捜査線上に浮かんだある人物を立件しなかった事情を語った。ゼネコン汚職事件では、建設会社役員から押収した手帳の記載から当時の仙台市長にお金を贈った事実をつかみ、それを突破口に摘発したことを明かした。

 その後、2010年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を契機に検察への国民の信頼ががた落ちになり、特捜部が事件に着手する機会が減ったことに言及した。宗像さんは、その原因を「失敗を恐れるようになった」と分析し、「慎重にやるのはもちろん大事なことだけど、慎重になり過ぎると事件ができなくなる」と後輩検事に奮起を促した。

 取り調べの録音録画という、自分の現役時代にはなかった捜査環境の変化については、贈収賄の立件は供述がないとだめなのに、「自白を求めない」「供述がなければ成立しない犯罪はほとんど摘発できなくなった」との印象を語った。

 宗像さんは特捜部にいたころ、四六時中追っかけられた多数の事件記者との付き合いも振り返り、「マスコミに対してウソはつかない、本当のことも言わない」を心掛けていたという。私の経験上、記者に「ウソはつかない」を実践していた捜査幹部は少ない。その点に宗像さんの実直な人柄がにじみ出ていたと思う。

 


ゲスト / Guest

  • 宗像紀夫 / Norio Munakata

    日本 / Japan

    元東京地検特捜部長 / former prosecutors director, special investigation department , Tokyo District Public Prosecutors Office

研究テーマ:平成とは何だったのか

研究会回数:4

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