2018年01月25日 15:30 〜 16:30 9階会見場
クレヘンビュールUNRWA事務局長 会見

会見メモ

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

通訳 池田薫

 

UNRWA(国連広報センターHP)


会見リポート

拠出凍結、大きなリスク

宇田川 謙 (共同通信社外信部次長)

 シリア、レバノン、ヨルダン、東エルサレム、ガザ…。「想像してみてほしい。52万5千人の難民の子どもらが通う学校や、年に300万人以上が訪れる診療所が閉鎖されたら、と」。トランプ米政権が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金を大幅凍結した影響は計り知れない。「どうしようもない非常に大きなリスク、そこに私たちは立っている」。緊急支援の必要性を強く訴える会見となった。

 UNRWAが活動を始めた1950年、支援対象は約70万人だった。それから68年。生まれた子どもも含め約500万人にふくれ上がり、UNRWAは約700の学校や約140の診療所を運営し、準国家的サービスを提供する機関に。「こんなに長期間の活動は想定されていなかった」。政治的解決がなされなかったことの裏返しでもある。

 トランプ政権はエルサレムをイスラエルの首都と認定、米大使館を来年末までに商都テルアビブからエルサレムに移し、中東和平交渉を「世紀の取引」で解決すると主張。UNRWA支援の資金は「テーブルの上にある」とパレスチナに交渉の席に着くよう迫る。

 しかし、難民の現実は重い。半数以上は、イスラエルとパレスチナ自治政府が相互承認した1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)以降の生まれ。「若い世代は穏健の道を進み、外交や政治を信じれば、解決の道が開けると言い聞かせられてきた」と事務局長は語る。

 資金不足でUNRWAの活動が停止し「難民の未来や希望が奪われれば、不安や反発、怒りが生まれ、地域の不安定化を招く」。そして、会見の最後をこう締めくくった。「中東にはリスク、苦難、暴力、懸念が嫌というほどある。もう一つリスクを増やす必要はない」。シリアなどの危険地で働く職員の思いに応えるためにも、新たな拠出国や拠出者を探し出す決意を見せた。


ゲスト / Guest

  • ピエール・クレヘンビュール / Pierre Krähenbühl

    国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長 / Commissioner-General, UNRWA

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