2018年01月30日 16:00 〜 17:00 9階会見場
「2期目の習体制」(3) 宮本雄二 元中国大使

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会見リポート

対日改善に動き出した中国 その意図と背景を鋭く分析

加藤青延 (NHK解説委員)

 「間違いなく習近平政権は対日改善に舵を切りました」

 そう断言した宮本元大使だが、日中関係がかつてのような極めて良好なものに戻れるわけではないとの見方も同時に示した。長年外交官として日中両国政府間の交渉に深く関わってこられた宮本元大使は、豊富な経験と知見をもとに、大きな転換期にある中国外交の舞台裏や、今後の日中関係の展望を明快に読み解かれた。

 宮本元大使によると、習近平時代の外交は、最高指導者がすべてを決めた毛沢東、周恩来、鄧小平時代のシステムに回帰しているという。権力を手にした習主席は当初、国として絶対譲れない「核心的利益」を前面に打ち出すなど、強硬外交を展開。その結果、近隣諸国との関係を悪化させ、米国とは地政学的対立のみならずイデオロギー対立まで引き起こした。そうした袋小路から脱するために、最近は「人類運命共同体」という言葉を盛んに使い出し、世界との共存共栄を強調するようになったのだという。

 日中関係については、2012年の尖閣諸島の「国有化」問題をきっかけに、自衛隊と人民解放軍とが直接対峙する構図が生まれ、安全保障という新たな柱が立ってしまったことが、後戻りできなくなった要因だとした。ただ、北京では最近「中国が対日外交を間違えた結果、自国の発展に大きな支障をきたした」と指摘する本が堂々と出版されるなど、対日改善を求める声が上がり始めているという。そこで、習政権が対日改善の方向に舵を切り、首脳同士の往来再開に向けて、河野外務大臣の訪中を受け入れるところまできたのだという。

 ただ宮本元大使は、日中関係というものが、不測の事件や事故が起きただけで壊れてしまうほど脆弱なものであるとも強調した。そしてより強固な関係を築くためには、とりわけ安全保障問題で話し合いを進めるべきだとし、互いに軍備拡張競争に陥ることなくこの地域の安全を確保できる国際的な枠組みを構築する必要性を訴えた。


ゲスト / Guest

  • 宮本雄二 / Yuji Miyamoto

    日本 / Japan

    元中国大使 / Former Ambassador to China

研究テーマ:2期目の習体制

研究会回数:3

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