2017年10月31日 18:00 〜 19:00 10階ホール
ストルテンベルグ NATO事務総長 会見

会見メモ

ノルウェーの首相を2度務めたベテラン政治家で14年3月から現職。安倍首相らと会談し北朝鮮制裁履行の重要性などを確認。「今のNATOは欧米以外の地域やサイバー攻撃などグローバルな新課題にも取り組んでいる。日本との協力関係も強化していきたい」

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事

通訳 原不二子 戸田なおみ

 

 NATOウェブサイト(英語)


会見リポート

ハイブリッド戦争とどう向き合うか

松尾 圭介 (時事通信社外信部編集委員)

 国家と国家が正面からぶつかる戦争が地球上から消えつつある。2008年8月のロシア・グルジア(ジョージア)戦争が最後ではないかと考えていたら、10年1月にもエチオピアとエリトリアの衝突があったらしい。地上から戦争が消えたわけではない。武装勢力という非国家主体が、かつての国家並みの軍事力を持ち、戦争を引き起こしている。そして、今度は国家までが、非国家主体を利用して戦争を仕掛けるようになった。それがハイブリッド戦争だ。

 

 6月にモンテネグロが加わって29カ国体制となった北大西洋条約機構(NATO)は、考えてみれば、消えつつある古い戦争の権化だ。しかし、ストルテンベルグ事務総長は「新たな挑戦を受けても適応してきている」とNATOの柔軟性を強調した。1949年の誕生から間もなく70年。今でも「強力な同盟を維持している」と胸を張るNATOはハイブリッド戦争とどう向き合うのか。

 

 ハイブリッド戦争が「どのように行われるのか既にわれわれは目撃している」と事務総長は指摘した。14年からのウクライナをめぐる紛争が、NATOの警戒を強化している。「真偽不明の情報を次々流し、軍服も着ず階級章もない軍人が展開し、サイバー攻撃も行う。あらゆる手段を組み合わせる目的は、攻撃されていると気付かれないうちに攻撃してしまうことだ」とハイブリッド戦争を定義した。

 

 これに対し「何よりまず情報に関する能力を高めることが必要だ」と認識している。「今何が起きているのか把握できる偵察・監視力を強化し、共通認識を構築していく力を強めていく必要がある」と強調した。

 

 続いて「攻撃に即応できる兵力」を、危うい地域にあらかじめ展開させておく抑止の重要性も説いた。NATOは最近、バルト三国や東欧への部隊展開を増強している。

 

 三点目として、把握した事実を市民に還元し「各国が偽情報と戦う力を強化する」ことが重要になる。「事実は必ず偽情報に打ち勝つ」と事務総長は信じている。

 

 核兵器やミサイルばかりではない。高価な兵器を使わなくても一定の戦果を得られることをここ数年でよく学んだ国があるはずだ。NATOの覚悟は決して他人事ではない。


ゲスト / Guest

  • イェンス・ストルテンベルグ / Jens Stoltenberg

    NATO 北大西洋条約機構 / NATO

    事務総長 / Secretary General

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