2017年05月12日 13:30 〜 15:00 10階ホール
研究会「韓国大統領選挙と新政権の課題」西野純也 慶應大学教授

会見メモ

5月9日に投開票が行われた韓国大統領選の選挙結果の分析と次期政権の課題を語った。「当選後すぐの政権発足であり、文在寅政権は難しいスタートだ」「南北関係改善が最重要外交課題。日韓関係は時間が必要か」

 

司会 山本勇二 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

韓国新政権の困難な船出

出石 直 (NHK解説委員)

朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾罷免によって5月9日に投票が行われた韓国の大統領選挙は、共に民主党の統一候補、文在寅(ムン・ジェイン)氏が大差をつけて勝利し、保守から進歩へ9年ぶりの政権交代が実現した。

 

文氏の最大の勝因は、前政権への批判と政権交代を熱望する世論の高まりにあり、保守対進歩という理念対立ではなかったと、西野教授は分析する。世論調査で一時は文氏に3ポイント差まで猛迫していた国民の党の安哲秀(アン・チョルス)氏は中道政治を目指したものの、右からも左からも攻撃されて失速し3位に終わった。一方、朴槿恵政権の与党だった自由韓国党の洪準杓氏は、朝鮮半島情勢の緊迫化を背景に安保イシューを全面に掲げて選挙戦の後半で支持を伸ばし、安哲秀氏を逆転した。国会での議席も100を超えるまで回復している。「保守層の支持は依然として根強く、文政権の不安定要素となるだろう」と指摘した。

 

文氏の得票率は41.08%。経済格差や就職難など社会の閉塞状況に苦しみ“社会を変えたい”という熱望する世論が政権交代の原動力となった。だが文氏の政権与党である、共に民主党の国会での議席は4割程度に過ぎない。国民の党や保守勢力の一部と協力して政権運営をしていく「協治」が実現できるのかどうか。国民が求める「改革」を進めれば保守勢力は反発し「国民統合」は遠のいてしまう。

 

外交面で最優先されるのは対米関係、そしてTHAADの配備問題で悪化している中国との関係改善だ。対北朝鮮政策は「非核化を段階的に求めながら南北関係の改善を図るという並行アプローチとなるだろう」と指摘する。しかし、国際的な包囲網を勝手に崩すことはできないし、北朝鮮に対する国民の世論も厳しい。対日関係については「柔軟性を発揮するのは難しい。文政権が置かれている困難な状況を理解した上で韓国との関係を考えていく必要がある」と締めくくった。


ゲスト / Guest

  • 西野純也 / Junya Nishino

    日本 / Japan

    慶應大学教授 / Keio University

研究テーマ:韓国大統領選挙と新政権の課題

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