2017年04月26日 12:45 〜 14:15 9階会見場
「フランス大統領選」 吉田徹 北海道大学教授

会見メモ

4月23日に行われた仏大統領選第1回投票の結果、中道系のマクロン前経済相(得票率24.01%)と極右・国民戦線のルペン党首(同21.30%)が5月7日の決選投票に進出することになった。吉田教授がその結果を分析した。

 

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

「春の祭典」の不協和音

鶴原 徹也 (読売新聞社編集委員)

冒頭、バレエ音楽「春の祭典」に言及。1世紀余り前のパリ初演時、酷評された。後世の評価は、変異するリズム、耳障りな不協和音など、変動期にある当時の世界の反映だったというもの。「祭典」の後、世界は2度の大戦をくぐる。

 

今、先進民主主義国の英国と米国で、戦後体制を否定する奇妙な民意が表出している。フランスはどうか。「現代社会を作り上げてきた様々な要素が変わりつつある。新しい要素が頭をのぞかせているのかもしれない」。吉田氏の問題意識だ。

 

今回の仏大統領選は、半年前には泡沫扱いだった独立系のマクロン氏と、政界主流から忌み嫌われる極右・国民戦線のルペン氏が4月23日の第1回投票で抜け出し、5月7日の決選投票に臨む。

 

2期目を狙った現職大統領が出馬できない、左右の2大政党の候補がいずれも決選に進めない――等々、異例ずくめの展開となった。

 

大方の見方はマクロン氏優位。吉田氏も「よほどの大番狂わせがない限り、マクロンで決まり」。ただ、投票率が極めて低ければ、ルペン氏当選の可能性もあるという。

 

マクロン政権誕生の場合、万事めでたしとなるのか。吉田氏は「(フランスが)統治不可能になる」場合も想定する。なぜか。

 

焦点は6月の仏下院選。左右2大政党に勢いはない。国民戦線には「ガラスの天井」がある。かといって、マクロン新党は単独では勝てまい。その結果、吉田氏の新政権の見立ては「良くて、(大統領の党と政府与党が違う)コアビタシオン。悪ければ、仏版(下院で単独過半数の党のない)ハングパーラメント」。どちらにしても大統領は手足を縛られることになる。その場合、フランスの「政治空白」現象は続く。

 

吉田氏はおそらく今、「春の祭典」の不協和音を耳にしている。歴史が繰り返すのであれば、世界は新たな秩序を見いだす前に、破壊的局面をくぐることになるのだが。


ゲスト / Guest

  • 吉田徹 / Toru Yoshida

    日本 / Japan

    北海道大学教授 / professor, Hokkaido University

研究テーマ:フランス大統領選

研究会回数:1

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