2017年03月16日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「北朝鮮の核とミサイル」⑤ 古川勝久・国連北朝鮮制裁委員会元専門家パネルメンバー 

会見メモ

司会 山本勇二 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

マレーシア、北朝鮮制裁の抜け穴に

山本 勇二 (企画委員 東京新聞論説委員)

北朝鮮に対する制裁を国連加盟国が履行しているか。古川氏は安保理専門家パネルのメンバーとして4年半務め、そのリポート作成に加わった。

 

まず金正男氏殺害事件が起きたマレーシアの事例を紹介した。北朝鮮の不法ビジネスのフロント企業がいくつもあり、工作活動の拠点になっていたとみられるが、警察の取り締まりは実に手ぬるいものだった。あるマレーシア人実業家は北朝鮮と親交があり労働者10人を勤務実態のないまま雇用していた。この中には事件関与を疑われる人物も含まれていた。正男氏殺害事件でマレーシアは被害者と見なされているが、実際には北朝鮮と長年のなれ合いが生んだ結果だと厳しく指摘した。

 

北朝鮮の武器輸出はますます巧妙になっている。十数年前には貨物船に武器を積載し、その上から食糧やセメントが入った袋で覆うという稚拙なやり方だったが、今は部品に小分けし、しかも1つずつは問題がなさそうな民生品の状態で送る。搬入先で組み立てて武器や軍事物資に姿を変える。北朝鮮は型式が古い武器を生産し修理も請け負うから、中東やアフリカの紛争国からの注文は続くとの見方を示した。

 

東南アジアなど各国を調査したが、政府は大体非協力的で情報を出し渋るし、税関職員には不法な輸出入品を見抜く知識が足りない。制裁の鍵を握るのは中国だが、中央政府が制裁の必要性を認めても、地方政府や税関はまだ意識が低いのが現実だ。北朝鮮の軍事物資には日本の民生用機材が使われ、海外で生産されたものも多いと推測されるが、日本政府はもう少し監視と追跡に本腰を入れて取り組むべきだと訴えた。 

 

北朝鮮の核、ミサイル問題は外交での解決が必要だとの見解を示したが、外交交渉をうまく進めるためにも、制裁の調査を十分に行い北朝鮮に不法の実態をはっきり突きつけることが重要だと述べた。


ゲスト / Guest

  • 古川勝久 / Katsuhisa Furukawa

    国連 / 日本

    国連北朝鮮制裁委員会元専門家パネルメンバー

研究テーマ:北朝鮮の核とミサイル

研究会回数:5

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