2017年02月15日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」(15) 山口絵理子 マザーハウス代表

会見メモ

国際機関のインターンで途上国支援に違和感を覚え、23歳で最貧国バングラデシュでの起業を決意。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」をモットーに、ジュートと革の麻でバッグを作り販売する。「労働力の安さではなく地域の個性や可能性をアピールしたい」

 

司会 水野裕司 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

マザーハウスHP


会見リポート

途上国から世界的ブランドをめざす

石鍋 仁美 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

慶大で開発経済を学んだ後、途上国の現場を知ろうとバングラデシュの大学院に進学。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理想を掲げ24歳で起業した。「かわいそうだから買ってあげる」商品ではなく、「かっこいい、かわいい」と素直に思えるものを作る。そして「途上国」のイメージを変え、働く人たちの生活も良くしていく――。10年前に取材した時、そう語っていたことを思い出す。

 

創業11年目を迎え、思いはぶれない。バングラデシュだけだった生産地はネパールなど計4カ国に拡大。扱う商品もバッグから服、アクセサリーへと広がり、日本、香港、台湾で約30店舗を展開する。いずれ欧米市場にも打って出るつもりだ。

 

1人で始めたビジネスの仲間は現在、国内100人、海外200人。現地工場の工員の給与水準は同業の1.8倍。工場長クラスには日本人と同じ水準の賃金を支払う。設備も女性たちを含め従業員が働きやすい環境を整えている。

 

経営を取り仕切りつつデザイナーとして商品企画も担う。物まね品を安く作るのではなく土地の素材を生かしたオリジナル品を作るため、なめし工場などを単身訪ね、革や生地など素材の開発から関わった。起業した頃は自社工場を持たず生産は契約工場頼み。パスポートを盗まれ、デザイン画や素材ごと持ち逃げされた。そんな歩みを同時進行で記した自著はすでに3冊を数える。

 

山口さんみたいに生きたい――。そんな若い人たちにしばしば出会う。しかし山口さんは「本を読んで、誰かのようになりたいと思って始めたことなら、ここまで続かなかった」と振り返る。「自分の内側から出るもの、オリジナリティーが大事であり、まねからイノベーションは起きないのでは」。若者の生き方への助言は、日本の産業界全体へのメッセージとも重なった。


ゲスト / Guest

  • 山口絵理子 / Eriko Yamaguchi

    日本 / Japan

    マザーハウス代表 / CEO and designer, Motherhouse

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:15

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