2016年07月14日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「沖縄から考える」(11)在沖縄ジャーナリスト 山城紀子氏

会見メモ

沖縄タイムス出身のジャーナリスト・山城さんが「性暴力と向き合う」というテーマで話し、記者の質問に答えた。
司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

どん底から立ち上がった沖縄の女性たち

八牧 浩行 (時事通信出身)

戦前、貧しく男尊女卑の強い風土の中で沖縄女性の生活は厳しかった。それが戦争によって「ぺちゃんこにされた」と切り出した。沖縄戦では県民の4人に1人に相当する10万人の非戦闘員が犠牲になった。女性と子どもの被害は甚大で、残された戦争未亡人も多かった。

 

山城紀子さんが強調したのは、第2次大戦中、沖縄に存在した従軍慰安婦の実態。朝鮮半島から慰安婦として連れてこられ、戦後も沖縄でひっそりと暮らしていた女性に特別在留許可が出たという事実が1975年に報じられ、130カ所あまりの慰安所が設置されたことが判明した。沖縄戦の体験や語りの中から抜け落ちていた性暴力について、語っていこうという社会の空気が広がってきたという。

 

さらなる悲劇は戦後、米軍の管轄下に置かれたこと。米兵による婦女暴行は、自宅や畑、道端など場所や時間を問わず頻発した。占領下では加害者である米兵が処罰されず、復帰後も、日米地位協定が日本側の捜査や裁判の壁となった。社会保障や制度の整備も後回しにされ、児童福祉法、身体障害者福祉、精神衛生法、売春禁止法などの施行は本土から最大16年も遅れた。

 

会見の圧巻はどん底から立ち上がった沖縄女性たちの戦い。まず掲げたのが、沖縄の盲教育のパイオニアで、一昨年100歳で亡くなった中村文さんの写真。戦争で夫、子どもと両親を失い、出征した弟が失明し帰還。盲人の自立を目指して盲教育に力を注いだ。5重苦のヘレンケラーが1955年に沖縄に立ち寄り面会した際に示された「障害があるからこそ胸を張って生きなさい」とのメッセージに感動、教え子への励ましの言葉となった。

 

沈黙していたら何も変わらないと女性たちが気づき声を上げるようになった。6月19日の米軍属による女性暴行殺害事件抗議集会で、玉城愛さんが「安倍首相は第2加害者」と表明したことに触れ、「軍隊と基地は女性や子どもの安全をもたらさないことが分かってきた。黙れば次の犯罪につながってしまう」と語った。

 

「安倍首相の思いを先取りする形で靖国神社に参拝したり、放送電波停波を口にしたりする女性閣僚は(政権の)道具化されており、残念だ」とも述べ、沖縄女性記者の先駆けとして男性社会と戦ってきたジャーナリストならではの反骨ぶりを披露した。

 

揮毫は「個人の尊厳と両性の平等」。「個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた憲法24条は憲法9条とコインの裏表の関係」で尊重すべきだと力を込めた。


ゲスト / Guest

  • 山城紀子 / Noriko Yamashiro

    日本 / Japan

    ジャーナリスト / Journalist

研究テーマ:沖縄から考える

研究会回数:11

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