会見リポート
2016年02月19日
16:00 〜 17:00
10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」①志賀俊之 産業革新機構会長兼CEO
会見メモ
産業革新機構の志賀俊之会長兼CEOが会見し、記者の質問に答えた。
司会 安井孝之 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
会見リポート
オープンイノベーションで産業の新陳代謝を
安井 孝之 (企画委員 朝日新聞社編集委員)
会社や地域を変革しようとする「チェンジ・メーカーズ」を招く新シリーズの第一弾は、志賀俊之・産業革新機構会長兼CEO(日産自動車副会長)。同機構は国が出資する官民ファンドで、ベンチャーの育成や企業の事業再編を通じて、日本の産業競争力を高めようとしている。
キーワードはここ数年、注目されている「オープンイノベーション」。日本の会社は基礎技術から応用技術まですべてを自前で用意しようとしてきたが、それではすさまじい技術進化に追いつけない時代になったようだ。大企業が優れた技術をもったベンチャーと提携したり、大学と共同開発したりする。大企業同士でも部門ごとに手をつなぐ。自前主義を脱して、他者と連携することでイノベーションを起こすという手法だ。
志賀さんはそれを自動車業界で起きていることを例にして、「オープンイノベーションで産業の新陳代謝を進めるべきだ」と訴えた。ソフトに強い米グーグルやアップルが自動車業界への進出をうかがい、ハードに強い既存自動車メーカーとの主導権争いは激しくなる。自動車メーカーだけで勝ち抜くという発想では負ける。トヨタがAI分野で米シリコンバレーに新会社を設立し、米国の人材や技術を取り込もうとしているのもオープンイノベーションの典型だ。
志賀さんはそういった動きを官民ファンドの機構が後押しをし、産業競争力を高めたい意向だが、官の支援がなくても自ら動き出す民の動きが鈍い現状には、やや残念そうだった。
会見のあった2月19日はシャープの再建案づくりが大詰めに差し掛かっていたタイミング。再建案を巡り機構と競っている台湾の鴻海精密工業の動きにも関心が集まり、多数集まった記者からの質問もシャープ問題に集中した。
「会社が健康体の時に事業の組み替えをしていかないといけない」という志賀さん。体力をすり減らし、官民ファンドや台湾企業の判断に頼るまな板の鯉となったシャープは、その反面教師でもある。
ゲスト / Guest
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志賀俊之 / Toshiyuki Shiga
産業革新機構会長兼CEO / Chairman and CEO, Innovation Network Corporation of Japan (INCJ)
研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く
研究会回数:1