2015年12月09日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「戦後70年 語る・問う」(40)加藤典洋さん(文芸評論家・早稲田大学名誉教授)

会見メモ

10月に出版された『戦後入門』(ちくま新書)を軸に戦後論について話し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

対米自立の改憲を提言

中井 良則 (日本記者クラブ専務理事)

「戦後70年」シリーズ企画で14年11月に続き2回目をお願いした。前回、本人が執筆を予告していた『戦後入門』(ちくま新書)を1時間20分語り、8人の質問に50分答えた。

 

「戦後70年の本質は対米従属の70年だったことにある。憲法制定権力であった米国は自らの国益を守り、日本の憲法に拘束されない。そういう存在がいまも居座っている」

 

新著では、米軍基地撤去、自衛隊再編、非核兵器宣言を憲法9条に書き込む「左折の改憲」提言が目をひき、議論されている。だが、その根底にあるのは「対米関係が今のままでいいのか。米国からの自立をいかに実現するか」という焦燥感、あるいは危機感だろう。

 

新憲法により米軍基地を撤廃したフィリピン・モデルは同書でとりあげたが、この日は「補論」としてドイツ・モデルを語った。「米国から自立するためフランスと信頼しあって卵の白身のような信頼圏を作った。それがEUだ。日本は国連を信頼圏として作れば対米自立が果たせる」。同盟相手を米国から国連に切り替える戦略論でもある。

 

なぜ、改憲や政治プログラムにまで踏み込んだのか、という疑問にはこういう答え方をした。「どうすれば現状を打開できるか。自衛隊、核の傘、米軍基地、9条、靖国、そういったすべてをカバーした対案はこれまでだれも出していない。それを用意しようと考えた」「原点は2009年です。民主党の政権交代は戦後の一番大きな動きなのに、無残な失敗に終わった」

 

日米同盟堅持論だけで日本中が一致しているわけではない。異論を米国と世界に伝えるためには、英語版も必要になるだろう。

 

「自分は孤立を続けた人間だ」とも吐露した。原武史さんが「この批評家を孤立させてはならない」(朝日新聞書評欄)と書いたのを思い出す。


ゲスト / Guest

  • 加藤典洋 / Norihiro Kato

    日本 / Japan

    文芸評論家・早稲田大学名誉教授 / literary critic

研究テーマ:戦後70年 語る・問う

研究会回数:40

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