2011年01月27日 18:00 〜 20:10 10階ホール
試写会「ヒア アフター」

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会見リポート

死への想い 生への希望

塚田 博康 (東京新聞出身)

我流に意訳するなら「死後の世界」ということか。(それにしても、このごろの映画の題名はカタカナが多いですな)


制作総指揮のスティーブン・スピルバーグが監督にクリント・イーストウッドを指名したのだそうだが、イーストウッドはかつて「荒野のストレンジャー」や「ペイルライダー」で死者がよみがえってやって来る映画を監督・主演しているから、この題名とまんざら縁がなくもない。


インドネシアの海岸で休暇(実はプロデューサーとの不倫旅行)中に大津波に遭い、臨死体験をしたパリの女性キャスター(セシル・ドゥ・フランス)、死者との交信に疲れて工場労働者になっているサンフランシスコの霊能者(マット・デイモン)、元気者の双子の兄を交通事故で失い、薬物中毒の母と引き離されて里親に預けられたロンドンの男の子(ジョージとフランキーのマクラーレン兄弟、映画初出演にしてはすこぶる達者な12歳だ)が、それぞれの経過をたどってロンドンのブック・フェアにやってくる。


臨死体験で負った心の傷から逃れられないまま、仕事もうまくいかなくなったキャスターが、街角の宣伝ポスターの変更でクビになったことを知るあたりのさりげない描写のうまさ。霊能者の兄が、弟を交信に復帰させて大金を稼ごうと画策する滑稽。兄の霊との交信を求めて霊能者を探すが、誰も彼もインチキでがっかりする少年の失望─いたるところに監督の手練がのぞく。


三者三様の「死」への想いが交差するなかで、新たな「生」への希望が芽生えていくところに、この作品の真骨頂がある。下手をすればゲテものに落ちかねない主題を淡々と、しかも印象深く描いた佳品である。


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