会見リポート
2010年11月26日
15:00 〜 16:30
10階ホール
西林万寿夫・駐キューバ大使
会見メモ
最近のキューバ情勢について、西林万寿夫・駐キューバ大使がシリーズ研究会「大使に聞く」で話した。
西林大使はキューバの歴史を振り返り、特に1959年のキューバ革命以降の内政と経済を詳しく説明した。来年に予定される共産党大会を控え、「いま、キューバは革命後、最大の転換点に立っている」と表現し、ラウル・カストロ国家評議会議長がリーダーシップを発揮して経済危機克服に成功するかどうかに注目した。ソ連崩壊後、カストロ政権が倒れなかったのはなぜか、の理由について①ソ連・東欧のような党の特権階級がいない②フィデル・カストロ前議長の人気③米国の敵視政策が国民の団結につながった④革命政権に不満を持つ人々は米国に脱出した⑤ドル所持合法化、自営業解禁などの経済改革⑥ベネズエラと中国の支援――などをあげた。病気で倒れたフィデル・カストロが2010年7月―9月、公の場で演説を続けたことについては、フィデル本人が健康を回復したからであり、弟のラウルとの確執はない、との見方を示した。経済政策では、国家公務員の50万人削減や自営業の拡大といった最近の措置を説明し、家族以外の他人を労働者として雇えることを初めて認めた重要性を強調した。
司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)
在キューバ日本大使館のホームページ
http://www.cu.emb-japan.go.jp/index.html
在日キューバ大使館のホームページ
http://embacuba.cubaminrex.cu/Default.aspx?alias=embacuba.cubaminrex.cu/japonj
会見リポート
革命後、最大の転換点に
岩城 聡 (日本経済新聞前サンパウロ支局長)
06年、腸内出血で死線をさまよったフィデル・カストロ前国 家評議会議長。世界広しといえども、やれ立った、歩いた、しゃべったと、その一挙手一投足が話題になるのはこの人しかいない。社会主義の時代は遠くになり にけり。しかし、今も人々はキューバとフィデルに惹かれ続ける。大使もそんな一人だろう。
昨今の、カストロの表舞台への復活を「弟ラウルとの確執」とマスコミは書き立てる。しかし大使は「カストロの演説は内政に触れないし、ラウルも重要案件については病床の兄に相談している」と否定した。
経済が困窮しても、なぜキューバは生き延びているのか? これについては「赤い貴族=特権階級」が存在せず、国民の恨みを買わなかったことに加え、「米国の制裁こそが求心力を高めカストロの味方をしてきた」と逆説的に解説してみせた。
ただ、そんなキューバも「革命後、最大の転換点を迎えている」と断言する。キューバは〝愛人〟のようだと言う人がいた。独立後は米国に依存するが、革命で袖にすると、今度はソ連にぴたりと寄り添う。ただ、そのパトロンも金が尽きると、今度はベネズエラに乗り換えて……。
そして今度は、新たなパトロンに腕を絡めるのか、それとも米国とヨリを戻すのか。かの地では大好きなクラシックのCDも入手困難で不満でしょうが、もう少しキューバの行く末を見届け、また解説を聞かせてください。
ゲスト / Guest
-
西林万寿夫 / Masuo NISHIBAYASHI
駐キューバ大使 / Ambassador to Cuba
研究テーマ:大使に聞く