2010年09月02日 00:00 〜 00:00
ミシェル・シディベ 国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長

会見メモ


国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シデベ事務局長が記者会見を行い、地球規模のエイズ対策について「いまは最良の­時であり、最悪の時でもある」と語った。「最良の時」とは、治療の進歩により、エイズの原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全­ウイルス)に感染した人の長期生存が可能になっただけでなく、予防にも効果が期待できるようになったことだ。一方の「最悪の時」­は、エイズ対策の一層の規模拡大が必要なまさにその時期に、世界経済の停滞から各国の資金貢献意欲が減退し、これまでの成果すら­台無しにしてしまうおそれが出ていることだという。シデベ氏はこうした現状を打開するため、費用対効果が高く、途上国でも実行可­能な対策の実現を目指す「予防革命」と「治療革命」の必要性を訴えた。また、エイズを中心にした地球規模の感染症対策で、九州沖­縄サミット以来の10年間に果たした日本の主導的役割を評価し、さらなる貢献に期待感を示した。
司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)
通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)

UNAIDSのホームページ
http://www.unaids.org/en/default.asp

会見リポート

今が正念場、エイズとの戦い

浅見 英一 (共同通信科学部)

「今が一番良い時代であり、最も悪い時代」─。人類のエイズとの戦いの現状を、シディベ事務局長はこんなふうに表現した。

良い時代というのはもちろん、さまざまな対策が実を結びつつあることを指す。医療技術の発展により、先進国においてはもはや「エイズ」は「死」と同義語ではない。シディベ氏によれば、各国の努力により、治療を受けられる人の数も、ここ10年で飛躍的に伸びたという。

悪い時代というのは、世界的な景気後退を懸念した表現だ。各国がエイズ対策への拠出を抑制しようとしている。不景気に加え、これまでの成果が「エイズ対策はもういい」との雰囲気を醸成する可能性もある。

「今なお治療のウエイティングリストに1千万人もの人がいることを忘れないでほしい」と訴えた。特に深刻なのがアフリカ大陸で、多くの妊婦が治療を受けられないため、HIVに感染した新生児が年間40万人生まれている。1日7000人が新規感染し、1日1000人が死亡している。「怒りの気持ちをもう一度呼び起こし、世界が連帯する時だ」と呼び掛けた。

これまでもエイズ対策に多大な貢献をしてきた日本に対する期待は大きい。世界基金が10月に増資を行うのに向け、「これまでと変わらない、高いレベルでの投資を期待する」と話した。

今後の目標は、年間200万人いるとされるエイズ関連の死者と、それ以上とされる新規感染者をゼロにすること。それには、治療コストの削減が不可欠で、薬剤耐性の生まれにくい抗レトロウイルス薬の開発と、専門家を必要としない治療法の開発が必要だと説く。「私は結果主義者だ」と話すとおり、冷静な目で目標を見据えていた。

ゲスト / Guest

  • ミシェル・シディベ / Michel Sidibé

    国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長 / UNAIDS Executive Director

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