2009年07月02日 00:00 〜 00:00
田中浩一郎・日本エネルギー経済研究所中東研究センター長

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会見リポート

革命体制 内部で大きな揺らぎが

花岡 洋二 (毎日新聞外信部)

イラン・イスラム共和国の政治体制を、イスラムと共和制の「ハイブリッド」と表現した。そのうえで、6月の選挙と抗議デモへの対応で、共和制の部分が「色あせた」と断定。「強硬派法学者の主張する『共和制廃止』という方向性に進んでいることを想起させる状態にある」とみる。

アフマディネジャド大統領再選には、二つの意味が内包されているという。

まず、イラン版「チェンジ」はないことを、ハメネイ最高指導者が対外的に宣言したことになる。核開発、米国との関係修復、中東和平など各問題への強硬姿勢は今後も変わらないということだ。

そして、国を二分するような政治問題が生じた際に本来は大所高所から調停者として振る舞うべき最高指導者が、1人の候補に肩入れし、役割を放棄したこと。アフマディネジャド大統領が今後は強権的体質を強め、摩擦が増えると予想される中で、体制を安定させる仕組みがなくなった。

抗議に加わった人たちを大統領が「チリやホコリ」と呼んだ。田中さんは「チリ、ホコリこそが公害のような外部不経済であり、体制を脅かすものだ。体制の安定はそれを取り込めるかどうかにかかっている」という。体制がこれを無視したままでは、不安定化は避けられない。

当クラブでは前々日に、松永泰行・東京外国語大准教授が同じテーマで講演。「長期的には、今回の抗議に加わった『緑の波』運動支持者が勝利する見通しもある」と語った。

結論は逆だ。しかしハメネイ師を中心とした革命体制が内部で大きく揺らいでいるという肝心な点は共通している。目に見える大規模なデモはほぼ収束した。今後は、厳しい報道規制のなかで、目に見えない動きを見極める力が問われそうだ。

ゲスト / Guest

  • 田中浩一郎 / Koichiro TANAKA

    日本エネルギー経済研究所中東研究センター長 / Head, Mid-East Research Center, Institute of Energy Economics, Japan

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