2009年06月24日 00:00 〜 00:00
尾身茂・新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長

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会見リポート

メディアは全体像の見える報道を

柴田 文隆 (読売新聞科学部長)

国や自治体、学校、医療関係者はみなよく今回の事態に立ち向かったけれど、「それぞれ学ぶべきことがあった、というのが結論です」。新型インフルエンザ対策のかじ取り役である尾身委員長(自治医大教授)の口調は淡々としているが、次の「第二波」来襲を迎え撃つ緊張感をにじませるものだった。

今回流行した新型インフルの特徴については、①感染力が季節性よりやや強い②多くは軽症で治癒③抗ウイルス剤も有効─と紹介。しかし、「若い人が感染しやすく、糖尿病やぜんそくなどの基礎疾患がある人や妊婦、一部の健康な若者も重症化している」点は油断できない、と指摘した。「こうした感染を防ぎ、犠牲者の数を増やさないことが、われわれの最大の任務だ」

秋以降の感染拡大はどうなるのか。どう備えたら良いのか。「南半球の寒さは7月が本番。世界的にはさらに広がる恐れがある。日本でも、夏になってもじわじわ感染が続くのではないか」と予測。「冬には感染性を強めた、より大きな感染の波が来ると覚悟して対応すべきだ」と表情を引き締めた。

そして、感染動向をいち早くキャッチするためのサーベイランス(監視)と医療体制の整備、新型ウイルス用ワクチンの製造・備蓄などを喫緊の課題として挙げた。

報道にも一言。「マスコミが発する情報は、政府や世界保健機関(WHO)より強力な場合もある。マスクが売り切れた、といった表面的な現象を追うだけでなく、距離を置いて全体像が見えるような記事も丁寧に載せてほしい。重要な情報を柔軟、機敏に出せないのなら、官僚の硬直性など批判できないのでは?」

尾身さんが担うのは、政策決定者に正確な医学情報を伝え、合理的な判断を促す仕事。次の機会には是非、日本の政治家の科学リテラシーについてうかがいたいと思った。

ゲスト / Guest

  • 尾身茂 / Shigeru OMI

    新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長 / Chairperson, Professional Advisory Committee, Measure to New Type of Influenza Head Office

研究テーマ:新型インフルエンザ

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