2009年05月22日 00:00 〜 00:00
佐藤博樹・東京大学教授

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会見リポート

働き手に必要なキャリア形成

岡本 峰子 (朝日新聞論説委員)

「派遣村」以降、雇用問題の象徴となっている派遣労働。厚生労働省研究会などで活躍する佐藤さんが、海外と比べながら、論点をまとめた。

ハケンハケンと日々ニュースで見聞きすると、派遣労働者がかなり多いと思いがちだが、実は労働市場の2~3%。非正規雇用者だけでみても1割未満だ。国内では1985年に労働者派遣法が制定された若い市場である。

派遣労働の歴史が比較的長い欧米の制度(フランス型、ドイツ型、英米型)と比べながら、佐藤さんが「日本にも法規制が必要」と強調したのは、派遣スタッフと派遣先社員との差をなくす「平等取り扱い(均等ルール)」のみ。そして、日本ほど業種や職種、期間を法令で規制する国は少ないとして、「均等ルールは取り入れるべきだが、あとは緩和するべきでないか」と言及。そして、労働者派遣法改正で野党共闘案が出ているように「派遣」という働き方そのものに対する批判が強いことに対しては、「プラスマイナスの両面があり、実証的な検証が必要だ」とくぎを刺した。

どの企業も、市場の不確実性が高くなる中では、長期の固定的な雇用契約を結びたがらなくなる。短期間のスキル提供はますます需要が増すだろう。派遣がその役割を担う可能性はあるのではないか。

しかし、問題となるのは、派遣会社の機能だ。スタッフの能力を適切に評価し、派遣先に対して適切配置を求める交渉力があるか、スタッフ一人ひとりのキャリア形成を計画的に行えるかだろう。

正規社員もいまや雇用不安にあり、不況期にキャリア教育が疎かになるのは同じだ。この日の研究会では触れられなかったが、派遣会社、そして、派遣先の企業がともに協力しあい、正社員・派遣社員の教育訓練に取り組むことが必要だろう。

ゲスト / Guest

  • 佐藤博樹 / Hiroki SATO

    東京大学教授 / Professor, University of Tokyo

研究テーマ:雇用問題

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